我が戸籍法上、本籍は戸籍の単位である家の所在地を意味する。一般的には祖先の墓や本家がある故郷が本籍になる。ところで現在、国内には本籍地の住所が同一の人々が数千人も暮している。「京畿道安城市三竹面(キョンギド・アンサンシ・サムジュクミョン…」。韓国に入国した後、通るようになっている「ハナ院」住所を本籍にした北朝鮮脱出者らだ。言わば、ハナ院は北朝鮮脱出者らが韓国国民に生まれ変わる「第2の故郷」となるわけだ。
◆正式名称が「北朝鮮から脱出した住民のための定着支援事務所」であるハナ院が昨日で開院5周年を迎えた。これまで、こちらに通っていった北朝鮮脱出者は3700人余り。北朝鮮脱出者らはこちらで2ヶ月間生活しながら適応教育を受けた後、社会に輩出される。文化探訪、購買体験、ボランティアなど文化的異質感を解消するためのプログラム、基礎職業教育、電算及び運転、心理安定及び情緒不安解消のためのプログラムなどが、ハナ院が北朝鮮脱出者らに教育する主要内容だ。
◆ハナ院はドイツ、イスラエルの例と米国など西側諸国の難民収容プログラムを参照して設立された。専門家らはハナ院が私たちより先に統一を成し遂げたドイツより積極的な政策の産物だと評価する。北朝鮮脱出者の社会適応を助けるための定着金支給と住い及び職業斡旋など5年間「特別待偶」をし、窮極的には「統一後の社会統合」まで考慮して、北朝鮮脱出者政策を立てているというのだ。一方、社会主義的思考を完全に捨てることができなかった北朝鮮脱出者らは、政府がしてくれることが少ないといつも不満が多い。考えてみれば政府と北朝鮮脱出者、双方の期待水準が違うしかない。
◆益々増える北朝鮮脱出者らに対する政府の支援政策には限界があるだろう。だからといって韓国側社会に適応することができずに迷う北朝鮮脱出者らが増加する傾向も無視することはできない。結局、政府ができないことは民間がしてくれなければならないのではないか。慣れず異質的な異国の地で暖かい一言やささやかな助けでも切実な北朝鮮脱出者らだ。彼ら一人一人が無事に韓国社会に定着するように助けてあげれば、後日南北の社会統合も一層容易になるだろう。そうしたことから、北朝鮮脱出者らを助けることは統一韓国の未来のための小さな投資だ。
宋文弘(ソン・ムンホン)論説委員 songmh@donga.com