
●伝統韓屋でのひと晩
王山(ワンサン)を中心に海抜900mほどの山々に畿重にも囲まれた慶尚北道青松(キョンサンプクド・チョンソン)。
深い山に囲まれている青松村は俗世間から離れて、豊かに恵まれた自然を感じることができる。そして古色蒼然とした99間の瓦家屋が残っていて、ひっそりとした伝統韓屋を体験することもできる。この伝統韓屋で民俗遊び5種競技を楽しんで、昔の人々の生活に浸ってみよう。
名も知らない草の咲いた庭の片隅の井戸で、釣瓶に水を汲む家。オンドルの火を焚く炊き口と窯鍋を感じることができるうえに、早朝はカササギの鳴き声で目覚めることのできる家。青松郡巴川面(パチョンミョン)トクチョン里に位置した松巣(ソンソ)古宅を訪れれば、昔の趣をそのまま感じることができる。
この家は朝鮮(チョンソン)時代英祖(ヨンジョ、21代王様)のとき、一万石の大地主と呼ばれていたシム・チョデの7代孫である松巣シム・ホテクが、1880年頃に建てた韓屋。当時、宮殿を除いた私邸は法律によって99間以下に制限されたため、松巣古宅は私邸のうち最大の規模だ。
慶尚北道民俗資料第63号に指定されたここは、松巣古宅という正式名称より「シム長者屋敷」と呼ばれる場合のが多い。昨年から朴ギョンジン氏がここを長期賃貸し、韓屋体験館として運営している。
120年という長年の歳月を物語るように、大門を開く度にきいきい音がするが、高柱大門のいかめしい形はそのまま残っている。
大門の中に立ち入ると、一番先に目立つのは仮塀。母屋に出入りする女性が舍廊(サランチェ)に寄居する男性の目に付かない様に作った簡易垣だ。仮塀を通ると舍廊。家の主人が寄居した大舍廊と後継者である長男が寄居した小舍廊とに分けられている。
女性の空間である母屋は舍廊の裏側に静かに「隠れて」ある。母屋は典型的な□の字形。門を入ると、東の方に部屋と台所がつながっており、西の方には物置、庫房などがつながっている。大門を立ち入って左側には妾が住んでいた離れ屋が別に設けられている。
空間が広いうえに建物が迷路のように四方につながっていて、子供達は隠れんぼをすることが好きだ。庭先には爪の大きさの青蛙だけでなく、大人の拳大の蝦蟇も現われる。蝦蟇が現われる度に喜ぶ、むく毛の犬の姿もおもしろい。
●民俗遊びも結構面白い
韓屋のうら寂しい雰囲気を楽しむことに加え、チェギチャギ、鳥打ち空気銃、投壷、七巧、輪回しなど民俗遊び5種の競技もおもしろい。ラジオもテレビもない古宅でのひと晩は、ややもすれば退屈ではと思って心配した朴さんが考え出した遊びだ。
種目ごとに100点満点で、合計500点の中で新記録を出した人には慶尚北道無形文化財のイ・ムナム先生の唐辛子みその壷を贈り物として与える。10位内に入った人には韓紙記念品を与える。
チェギチャギは片足で蹴るタンガンアジ、足を地につけないで蹴るホルレンイ、両足で交互に蹴る両足蹴りをするが、チェギを落とさずに蹴らなければならない。
輪回し遊びは家を一回りするのににかかる時間を点数に換算する。投壷は矢12本を一本ずつ円筒に入れながら競い合う。鳥打ち空気銃は、銃で10m前方にある銅鑼に当てる。命中の可否は銅鑼の音が聞こえるかでわかる。
七巧遊びは、一辺が10cmぐらいの正四角形の板を、三角形5個と四角形1個、平行四辺形1個などの七つに分けて、人物や動物、植物、建築物など500種余りの事物を作りながら遊ぶ一種の民俗パズルだ。伝統的な頭脳開発遊戯で、朴さんが積極的にお勧めする種目。
七巧遊びは紀元前600年頃に中国で始まったが、七巧板を知恵板とも言う。西洋の知識人らの間でも人気が高かった遊びで、小説家エドガー・アラン・ポーをはじめ、セント・ヘレナ島に流刑されたナポレオンも熱烈な七巧ファンだったと言う。
●韓屋と創作舞踊の出会い
深い山の古宅の夜は一味違う。薄黄色い障子紙からの光が漏れる縁側に座っていると、家の前を流れる小川の水音、あぜで合唱する蛙の音など、都心では聞くことのできなかった自然の音が四方から聞こえてくる。
夜が深まると漆黒のような闇を明るくしてくれるきらきらとした星の光りの下で、人々が一緒に集まって庭の窯鍋でジャガイモを蒸して食べながら仲良く話を交わす。
来月21日には日本の東京創作舞踊団がここへ来て、現代舞踊公演を繰り広げる予定。土塀に囲まれた広い裏庭で公演を鑑賞するのも風変わりな体験になるだろう。お問い合わせは054—873—0234
文=チェ・ミソン旅行プランナー:tigerlion007@hanmail.net
写真=シン・ソクギョフリーランサー写真作家:rainstorm4953@hanmail.net