盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が国家のアイデンティティを毀損しているというハンナラ党の朴槿恵(パク・グンヘ)代表の主張は、軽く聞き流すことではない。朴代表の言葉どおり、この政権が「創造、発展よりも、国の根本を破壊して突き崩す方向に向かっている」なら、そのような主張が出た背景と真偽を明らかにしなければならない。ヨルリン・ウリ党は、「季節外れの理念攻勢」として一蹴したが、単なる与・野党政争のレベルと見る問題ではない。
朴代表が、アイデンティティ毀損事例として挙げた疑問死調査委による非転向長期囚の民主化寄与の判定や、北朝鮮艦艇の北方境界線(NLL)侵犯事件での大統領の軍叱責などに対しては、他の意見もあり得る。問題は、このようなことがなぜ多くの国民の目にも、大韓民国のアイデンティティを否定する行為に映るのかということにある。そのような国民は、みな守旧反動勢力であるためか。否、そうではない。
原因は、この政権にあると考える。韓国の現代史を善と悪の対立の歴史と見て、過去を暴き出してでも悪は断罪しなければならないという誤った召命意識のためだ。歴史には、栄辱と功過が並存するものだが、その時代に生きていなかったという理由だけで、自らを過ちのない裁判官になろうとしている。そのような誤った意識と熱情を前にして、誰が国のアイデンティティを心配しないでいられようか。
大韓民国のアイデンティティは、憲法に明示されている。自由民主主義の基本秩序と市場経済に基づく民主共和国がまさにそれだ。これは決して毀損されてはならない価値であり、精神である。大統領と政権勢力に与えられた絶対の課題は、憲法を守護し、国のアイデンティティを守ることだ。政権は、憲法守護の義務を国民から一時的に委任されているにすぎないことを忘れてはならない。
感傷的な民族主義、基本的なバランス感覚も疑わしい歴史認識、主流勢力入れ替えのための歴史解釈の御都合主義で、現代史を恣意的に裁断し、国家のアイデンティティを傷つける政権になってはならない。それが国民が、大韓民国のアイデンティティを心配する理由だ。