市場で下着を販売していた金氏(48.ソウル西大門区弘恩洞)は、32坪の新築の集合マンションを購入して2年で、道端に追い出される羽目になった。
うなぎのぼりのチョンセ金(家を賃貸するとき家主に支払う保証金)を見かね、01年末1億ウォンを融資して「マイホームの夢」をかなえたのが災いに転じた。下着の販売で10年の返済条件の元金を1〜2年はどうにかこうにか返済していったが、景気が低迷し、昨年末からそれさえ難しくなったわけだ。結局、6月に銀行から集合マンションの競売処分通達を受けた。
金氏のような庶民たちが住む集合住宅の競売が急増し、8月の競売物件が38ヵ月ぶりにはじめて4万件を超えた。長引く景気の冷え込みから、生存の「最後の砦」である住宅さえ奪われている庶民層がそれだけ増えていることを物語る。
3日、競売情報の提供会社であるデジタルテインによると、8月全国の裁判所の競売に出された競売物件は、4万801件で、01年6月(4万600件)以来はじめて4万件を超えた。
このうち、集合住宅が1万839件で最高の割合(26.6%)を占めている。昨年8月(4479件)と02年8月(2495件)に比べ、それぞれ2.4倍と4.3倍に増えたものだ。
このため、今年1〜8月全国の競売物件は29万2000件で、昨年同期の20万2000件あまりに比べ、44.6%(9万件あまり)も増えている。このような勢いなら、今年の競売物件は約40万件へと増加し、通貨危機のあおりから競売物件のもっとも多かった00年(約54万4000件)の74%に迫る見通しだ。
競売物件が多くなっていることから、落札価格率((落札価格÷(予定価格又は最低制限価格)×100%)もじりじり低下している。これは、家を競売で処分してからも借金が返済しきれず、生活苦に陥る恐れがあることを示唆する。
とりわけ、借家人はチョンセ金を返してもらえず、もう一つの被害にあうことになる。
デジタルテインの李ヨンジン部長は「通常70〜80%を挟んで推移していた集合マンションの競り落としか確率が8月に61.22%に落ち込んだ。このため、銀行より先順位債権者でなければ、チョンセ金を全額返してもらう場合はほとんどない」と述べた。
許振碩 jameshuh@donga.com