「夜もよく眠れません。今後また誰がどうなるか分からなくて…」
このごろプロ野球の関係者に会うと、誰もがこうした悩みを打ち明けてため息をつく。プロ野球を襲った兵役不正の嵐のせいだ。新聞と放送には連日帽子を深くかぶって頭を下げたプロ野球選手が出ている。
「秋の祝祭」というポストシーズンを控えて熱気に包まれているはずの競技場はひっそりと静まり返っている。観客席はがらんとしていて、楽しい応援にはっぱをかけるべきチアリーダーは姿を消した。兵役不正事件が明らかにされた4日以後、プロ野球観客は2000人にもはるかに及ばない。
9日、全国4つの球場に足を運んだ観客は6313人。平均1500人をやや上回る水準だ。シーズン平均の4608人の半分にも及ばない。仲間たちが召喚され騒がしい中で、残りの選手は勝負にあまり関心がなさそうに、ただ早く試合を終わることを望んでいる様子だ。
9日には4試合がいずれも3時間以内に終るという珍しい出来事が起きた。社稷(サジク)球場でのロッテ—LG戦は2時間22分で終わった。シーズン平均試合時間の3時間10分より50分も早く終ったもの。この様な憂鬱(ゆううつ)な場面から、1982年プロ野球発足以後最大の危機に直面しているプロ野球が肌で感じられる。
兵役不正ブローカーの手帳に名前が載っているプロ野球選手は、当初警察側が発表した50人をはるかに上回る110人以上。所属選手39人が含まれている球団もある。1軍選手は8球団で40人あまり。
公開された「リスト」に兵役義務を終えた選手まで含まれているなど、やや現実とかけ離れている部分もあるが、今度の事件が大規模で組織的に行われていたというところで、プロ野球全体のモラルハザードを浮き彫りにする致命的な悪材料に間違いない。
ある野球関係者は、「関わっている選手が多いことから、ともすれば不正が摘発されても体で済ませばいいという誤った認識によって、猫も杓子も誘惑に負けたという誤解をファンに与える恐れがある」と指摘した。
20代初めから半ばまで盛んにプレーする時に軍隊に服務すると、事実上選手生活に終止符を打たなければならず、主戦級の場合は空白期間中に数億ウォンの金銭的損失を被るため、危険な道を選ぶという意味だ。しかも、「大当たり」になる可能性の高い自由契約(FA)制度も選手たちの誤った決定をあおったという指摘だ。
今度の事態でプロ野球はレギュラーリーグの残り試合とプレーオフで変則運営が避けられない。兵役不正を眺める社会の視線は冷たいばかりで、ファンがそっぽを向く中で競技場はがらんとするだろう。たとえ、観客が競技場へ足を運ぶとしても、一部選手とコーチングスタッフの空白による戦力の差し支えによって、競技力は落ちざるを得ない。
それでも韓国野球委員会(KBO)李サングク事務総長は、「試合はどんな状況の中でも続く」と話し、シーズン中断説を一蹴した。
兵役不正の疑いが持たれているあるエース級選手は、「申し訳ない出来事だが、ユニホームを着ている間は頑張りたい。野球は続くから、多くの関心を示してほしい」と話した。
今度の事態で国民スポーツというプロ野球は道徳性に大きな傷を付けられた。さらに大きな問題は脱出口が見えないということだ。
金鍾錫 kjs0123@donga.com