進歩派の元老約70人が国家保安法廃止を求めたことで、国家保安法存廃を巡る論議は本格的な保革対決の様相を呈した。元老たちは共同宣言を通じて、先週の保守派元老たちの保安法支持宣言を批判し、保安法については「改正や代替ではなく、廃止すべきだ」と主張した。これに対抗して保守派元老たちは、市・道別に廃止反対決起大会を開く予定だという。ややもすると国が二分するかもしれない深刻な状況だ。
国家保安法存廃論議は、このような方向に進んではいけない。本紙で数度に渡って指摘したように、法が持つ問題点と対策に対しては、すでに国民的共感が形成されている。人権侵害の危険性をはらむ条項は無くすか手直しして、これによる安保不安に対しては、いかなる形であれ安全弁を設けなければならないということだ。ならば、膝を突き合わせて理性的な論議を通じて接点を探せばいいことだ。
与党ヨルリン・ウリ党が代替立法として提出した破壊活動禁止法案と、野党ハンナラ党が出した国家保安法改正案だけを見ても、潜入・脱出・非告知罪や賞賛・鼓舞罪の部分は削除または処罰範囲の縮小などで、立場の相違が大いに縮まったのは事実だ。これだけでも大きな進展である。
それなのに一方では、「親北反米左傾勢力が国を掌握している」と攻撃し、これに対抗して首相は、保守派元老たちに向かって、「クーデタ勢力は、保安法廃止に反対してはいけない」と言い返した。一体何のための改廃論議なのか分からない。ここに、社会の元老たちまで賛否が分かれるなら、その影響はどこまで及ぶのか、実に心配される。このままでは、本質はそっちのけにして、消耗的理念論争で相互の敵対感と憎悪心だけが拡大再生産される。
その鎖を断ち切らなければならない。保安法改廃論議を政治的象徴論争の陥穽から引き摺りだし、実質的な論議の軌道に乗せなければならない。やはり与野党がまず先に国会の中で膝を突き合わせるべきだ。必要なら、国会議長も乗り出さなければならない。いつまでも見ていてばかりはいられない。