東海(トンヘ)に日の出があるならば、西海(ソヘ)には日の入りがある。暗くなるにつれ、青空と海がいきなり一面赤に変わる景色は神秘を感じさせる。
安眠島(アンミョンド)の夕陽は韓国3大夕陽の一つとに挙げられるほどすばらしい。落照が絶頂となる時期は、1年中天気が最も晴れて水平線のはっきり見える10月半ばから11月末まで。この頃になると、安眠島のコッチ海辺を訪れる人出も多くなる。
●「西海岸3大落照」の一つ
泰安(テアン)から30kmほど離れた安眠島は、韓国で6番目に大きい島だ。「動物も人も安らぐことのできる島」という意味の安眠島は、本来は島ではなかった。タコ足のようにくねくねと曲がりくねった泰安半島西南方の端に繋がっている陸地だったのが、朝鮮仁祖王の時代に、地方で集めた租税を船で輸送するために船路を作る過程で島になったのだ。長い歳月が経って1968年に連絡橋が架けられ、陸地と再び連結されたという事情のある安眠島だ。
車で乗り入れることのできる安眠島は、至るところ、安眠松の芳しい松の香りでいっぱいだ。日帝時代のころは、島中が青い森とも言えるほど松の木が茂り、「斧一本さえあれば食っていける」と言われるほどだった。島に沿って曲がりくねった道を走っていくうちに車窓から入ってくる濃い松の香りが鼻先に留まる。
美しい西側の海岸線に沿って、島あちこちに位置している10ヵ所余りの海水浴場も安眠島の誇り。コッチ、バラムアレ、チャントル、バッケ、セッピョルなど、名前にも趣がある。
中でも晩秋のロマンチックな風情を存分に味わいたければ、コッチ海水浴場に行ってみるのがよい。コッチは海岸に紅いハマナスが多いことから付けられた名前。ここの夕陽は辺山(ビョンサン)の彩石江(チェソッカン)、江華(カンファ)の席毛島(ソクモド)とともに「西海岸3大落照」。
鬱蒼とした松の森を背にして広がるコッチ海辺は、波打つ白い砂原だけでも寂しい海の情趣を満喫できるところだが、ここに老夫婦がいなかったら、今のように有名にはならなかったはず。
老夫婦とは、海水浴場前に立っているハルミ(ばあさん)岩とハラビ(じいさん)岩。新羅時代に戦争に出た夫を一生待ち続け、結局岩になってしまったという悲しい物語を持つ岩だ。近くになっても平行線を辿るしかない汽車のレールのように、永遠に会えないまま向かい合っている両岩は、いつもお互いを切なく眺めている。
長年をこのように切ない思いで過ごしてきた二つの岩は、この場所を、夕陽を愛でるのに、この上もないすばらしい場所にしている。一日を締めくくって沈む日が、まるで暖かい慰めのように両岩の間に落ちる姿が、コッチ海辺の落照のポイントだ。
●今日から22日まで「砂場のタイショウ海老フェスティバル」
この時期に安眠島に行けば、旬を迎えたタイショウ海老を味わうことができる。安眠島近くにある浅水(チョンス)湾は国内で最も大きい海老の生息地。海老は冬と夏に浅い泥土に卵を産んだ後、秋により深いところまで移動して冬を過ごす。この卵が成長して深い海に出る直前がタイショウ海老の収穫期だ。安眠島の名物となったタイショウ海老は、頭から尻尾まで捨てるところのない栄養のかたまりだ。鉄分とカルシウム、ビタミンB群の含量が高く、美容やスタミナ食品として抜群。
タイショウ海老の真の味を知りたければ、砂場の入り江のところに行ってみよう。安眠大橋を渡って右側に5分間行けば、ひところは大魚の喜びを享受したはずの古びた廃船が横たわっている砂場の入り江に出る。ここは西海でとれたタイショウ海老の7割が入る有名なタイショウ海老の集散地だ。
9月から12月初めまで、自然のタイショウ海老が食べられるが、一般的に10月半ば〜10月末が栄養豊かで全長25cm前後のジャンボ海老が味わえる時だ。あちこちで「取れたての生きたジャンボ海老」という看板を掲げた入り江の刺身屋が熱心に客引き競争をしている。オンラインでタイショウ海老を販売するサイト(www.anmyondo.com)もある。
タイショウ海老は刺身または鍋にして食べても美味しいが、最高の味はやはり焼いて食べるもの。粗塩の上で焼く海老の匂いが煙に乗って鼻を刺激する。既にしょっぱい海水が染み込み、別途の味付けは要らない。
旬とは言え、自然産であるため値段はそれほど安くはない。20〜30匹が入る1kgが3万〜3万5000ウォン。でも、田舎の人情が残っているため、運がよければ数匹ぐらいはおまけでもらえる。
今月8〜22日には安眠島砂場のタイショウ海老フェスティバルが開催される。タイショウ海老料理の試食をはじめ、ギターの夕べ、サムルノリなどの公演とともに観光客が直接参加するノド自慢大会、ダンス大会、大型チェギ蹴り、投壺など多彩なイベントが用意されている。問い合わせは、セマウル婦人会(041−673−5355)、準備委員長(011−431−0077)。
チェ・ミソン旅行プランナー