世界的な映画祭で相次いで監督賞を受賞した金基徳(キム・キドク)監督の学歴は中学校中退だ。彼は自分の学歴が取り上げられるのを嫌やがる。「小学校を卒業しただけであるにもかかわらず」という前提と共に、いつもテレビ番組の「成功時代」のようなニュアンスが漂う感じであるためだ。芸術家は作品で勝負する人だ。学歴という偏見を持って見るのは不当だ。ところが、教育問題が深刻な韓国の状況で、彼の存在は「制度的な教育は果たして必要か」という疑問さえ持たせる。彼が他人とまったく同じ教育を受けたなら、今のような位置に立つことができただろうか。
◆外国旅行の時、米国ノースキャロライナから来た小学校の女性教師に会ったことがある。彼女は、「韓国で何かありましたか」と心配そうに聞いた。その理由は、「急に韓国の子供たちが大勢来た」ということだった。その中には1人で留学に来た子もいて、6カ月以上も唖のように口を一文字に結んで、一人ぼっちでいる姿がとても可哀想だったと言った。その子がどうして親と離れて孤児のように一人で他郷暮らしをしなければならないのか、彼女には見当さえ付かないだろう。私としても恥ずかしい部分なので、あえて説明はしなかった。
◆韓国人の教育熱は本当に例がない。親は教育のため借家をしてまで江南(カンナム)に引越しする。母親は課外授業費を稼ぐためアルバイトをし、父親は子供の教育のため「家族との別居」も辞さない。このように教育熱はこれ以上ないほどなのに、教育現況は改善する気味すらみせない。入試制度は右往左往しており、教科書の左右理念論争、早期乳児教育、高校平準化、高校等級制など糸巻き車のように絡んだ問題は、一つ二つではない。そのためか、子供なしで生活する夫婦が、段々増加していく傾向だ。
◆いつだったか、ニューヨークタイムズに今年のノーベル物理学賞を受賞したデービッド・ポリツァー教授の受賞感想が載った。「私が受けた米国教育に感謝する」と彼は誇らしく述べた。劣悪な教育環境で育った人々には、あまりにも羨ましい言葉だ。ノーベル賞も羨ましいが、「我が国の教育に感謝する」と堂々と言える、その教育システムがもっと羨ましい。私たちはいつ頃になれば、そんなことが言えるのだろうか。
金ミジン客員論説委員(小説家)usedream@yahoo.com