「久しぶりに会ったのですが、みんな元気で背も伸びていてうれしいです。ジファン君は口ひげも生えていましたよ。」
「永遠のリベロ」こと洪明甫(ホン・ミョンボ、35歳、元ロサンゼルスギャラクシー)の「サッカー・クリニック」が開かれた28日のソウル・萬里洞(マンリドン)の孫基禎(ソン・ギジョン)体育公園。洪明甫の視線はプレーする44人のうち3人に終始向けられていた。昨年3月、9人が亡くなった天安(チョンアン)初等学校サッカー部合宿所での火災で、友だちと後輩らを亡くしたチョン・ジファン君(ヨンム中2年)とハンホ君(ソンゴ初等4年)兄弟とカン・ミンウ君(テファ中2年)だ。
同クリニックはポジションごとに基本のテクニックを習った後、8人ずつチームに分けてミニゲームを行う形で進められた。ジファン・ハンホ君兄弟は同じチームとなり、ミンウ君は他のチームとなった。ボールを追い駆ける彼らの表情からは昨年の痛みの影などひとつも見当たらなかった。
当時、火事現場に居合わせていたハンホ君は両足にやけどをし、まだ健康を完全に回復してはいないが、今年初めから学校を変えて再びサッカーを始めた。
兄のジファン君も天安初等学校のサッカー部出身。弟が事故に遭ったことで、サッカーをあきらめようとも思っていたが、洪明甫と知り合ったのがきっかけで、再びサッカーへの夢をつなげた。昨年6月、洪明甫に招待され、ミンウとともに米国を訪れた。彼は「その時、洪明甫おじさんが頑張れと励ましてくれたから、考え直した」と語った。
同じく天安初等学校サッカー部出身のミンウ君は、事故で弟のミンス君を亡くした。事故直前に、学校で弟にお菓子を買ってあげたのが、弟と過ごした最後となった。彼は「弟と後輩たちの分まで頑張りたい」と、サッカーに熱心だ。
同日のクリニックを終えて終了証を手にしたハンホ君は、火事で有毒ガスを飲み込んで痛めた肺がまだ治っておらず、かれた声で「大好きな洪明甫おじさんにも会い、サッカーも習えてうれしかった」と言いながら、感激の涙を見せた。
洪明甫奨学財団は昨年6月からこれらの3人にサッカー用品と学費を支援している。
金晟圭 kimsk@donga.com