主婦の金さんとダンキンドーナツのチェ主任は「ミステリー・ショッパー(mystery shopper)」だ。
ミステリー・ショッパーは、お客を装って売場に入って、販売員のサービスと製品管理がまともに行われているのかを点検し、本社に報告する人。販売員たちからは「アムヘンオサ(暗行御使:朝鮮時代の秘密監察官、江戸時代の隠密のようなもの)」と呼ばれる。
▲ミステリー・ショッパーにもノーハウがある
「もう、この服を来て来ることはありません」
経歴6年目のミステリー・ショッパーである主婦の金さんの言葉だ。記者とともに立ち寄ったサングラス売場で、記者が「サングラスが、今着ている服によく似合っていますよ」と敬語で話しかけたからだ。
金さんは「ショッピングに一緒に来るほどなら親しい関係なのに、敬語を使えば社員が疑う」とし、「次回売場に立ち寄るときは気づかないように他のスタイルの服を着なければならないようだ」と話した。
ミステリー・ショッパーは売場の店員が気づかないようにすることが一番重要だと言う。
かばん、衣装、アクセサリーなど、同じスタイルで二度売場を尋ねないことは基本。本社に入るときは、もしかしたら売場の販売員に会うかも知れないと心配して、ハンドバッグで顔を隠す「007作戦」をしたりもする。
販売員の見ていない所でチェックリストを作成しなければならないため、記憶力も重要だ。
金さんは「私が書いた報告で社員が解雇される場合もある」とし、「しかしサービス向上という目的のために、私的な感情は捨てなければならない」と話した。
▲サービスと品質を守る
外食会社と各流通会社は、専門ミステリー・ショッパーの他に、本社社員と主婦モニター要員などもミステリー・ショッパーとして活用する。販売現場のサービス実態を二重三重に点検するためだ。
ダンキンドーナツのチェ主任は「本社社員たちも月に1回程度ミステリー・ショッパーになる」とし、「150項目に達するミステリー・ショッパーのチェックリストをすべて覚えている」と話した。
デパートなど各流通会社はミステリー・ショッパーに、点検する「ミッション」を具体的に指示している。
例えば「夏季のイベント売場のサービスを点検せよ」、「靴売場であらゆる履き物を履いてみよ」、「ライバル社の売り場を見て回れ」など。
時には顧客たちが不満をよく吐露する売場を集中的に「見張れ」という指示が出ることもある。
現代(ヒョンデ)デパート・CS向上チームの李海粲(イ・ヘチャン)主任は、「本社の決めた標準化されたサービスが、売場でまともに実践されているかどうかを点検するのがミステリー・ショッパーの役割」とし、「彼らの評価は人事評価にも影響を及ぼすため、売場の社員たちは常に緊張している」と話してくれた。
新世界(シンセゲ)CSチームの文相一(ムン・サンイル)代理は「サービスもデパートの無形商品の一つ」とし、「ミステリー・ショッパーは現場を『監視』するレベルを超えて、消費者の立場でイベント売場の陳列状態やマーケティング要領なども助言している」と話した。
kimhs@donga.com