李石淵(イ・ソギョン)弁護士がテロの脅迫に苦しめられている。違憲決定が下された「新行政首都建設特別法」に代わる「行政都市特別法」に対する憲法訴願のためだ。法治主義に土台を置いた先進民主主義国家になるためには、テロは決してあってはならない。世界中でテロが幅を利かす国家は、決して先進国になることができないからだ。
◆歴史的にみてテロは、不道徳な国家権力によって反政府的人物に対して一方的に犯されるか、考え方と利害を異にする集団の間で双方向に起こるといえる。ナチのドイツ、旧ソ連、アフリカや中南米の独裁国家の場合が前者に当たり、中東とアイルランドが後者に属する。これら全ての場合で、加害者と被害者はどちらも終わりのない憎悪と復讐心に燃え上がることになり、彼らが行使する非人間的な暴力は、人々の暮らしと夢を破壊しながら恐怖を広げる。そうした国での経済発展はあり得ず、その社会は徐々に破滅への道にす進むことになる。
◆幸いにも韓国は、45年の解放直後における左右の衝突以後、そして軍事独裁以後、テロの脅威はなくなった。そして不思議なほど、かつて数多くの過激デモが行われた当時においても破壊行為はなかった。この数年のインターネット上の過激な言語テロにもかかわらず、今まで身体的なテロはあまりなかった。最近では、多くの国民が嫌悪する急進と超保守の集団があるにはあるが、誰もテロに合ったことがない。韓国の人々は、根本的に心の優しい人ではないかという気がする。
◆李弁護士に向けられた殺害の脅迫も、言語テロに止まることを望む。彼の弁論活動はあくまでも憲法に基づいた合法的な行為であり、また多くの人の考えを代弁している。彼を批判する側も法的に対応すれば良いはずだ。国の公権力はこうした合法的な活動を脅かす行為に対しては最後まで摘発して、戒めなければならない義務がある。思想や言論行動の自由が保障されない国は、死んだ社会と同然であるからだ。そして何よりも、テロがテロを呼びかねないからだ。
羅城麟(ナ・ソンリン)客員論説委員(漢陽大学教授・経済学)hwalin@hanyang.ac.kr