来年5月の地方選挙を控えて、各自治体の首長らが「票の行き先」を意識するあまり各種の許認可権をし意的に行使するなか、住民の間に不満の声が高まっている。一部自治体では、法や規定の上で許可すべきものを許可しなかったり、上位自治体に投げ出してしまったりする現象も頻繁に起きている。このことは、行政審判や訴訟につながり、行政力を浪費する結果をもたらしている。
▲「困った懸案」はよそに渡してしまう〓釜山市(プサンシ)と海雲台区(ヘウンデグ)は、水泳湾(スヨンマン)埋立地の開発に関連した民間業者の事業変更申請(地区単位計画の変更案)を、3年続けて一緒に背負いこんだ。最近、市は再び関連業務を海雲台区に渡した。民間業者は、マンション500世帯以上を建設した03年から4回にわたって、地区単位の変更案を提出した。
しかし、許南植(ホ・ナムシク)釜山市長と鞖徳光(ベ・トククァン)海雲台区庁長は、下手をすると特別恩恵をめぐる論議に巻きこまれるという懸念から、互いに様子をうかがってばかりいる、というのが関係者らの説明だ。これによって、およそ4万坪の土地を購入したこの会社は、金融負担に耐えきれず、不渡りに直面した。
▲「法律もない不許可」、もう一つの違法〓慶尚北道永川市(キョンサンブクド・ヨンチョンシ)は5月、金氏(32)が花山面(ファサンミョン)アムギ里の野山に992平方メートル規模の火薬保存施設を設置したいとして提出した許可申請に対し、不許可の決定を下した。
金氏は、警察庁による火薬施設の安全性検査を済ませ「問題なし」の判断を受けたが、永川市は「住民の反発と不安感をあおる」との理由で、開発許可を拒んだのだ。金氏は「安全性検査を通過し、べつに違法要素がないのに自治体が許可しないのは、裁量権の濫用」だと声をあげた。慶尚北道関係者も「法理論を重視する訴訟にのぞめば、自治体が敗北する可能性が高い」とし「永川市が法的判断よりは住民の票を意識しているようだ」と話した。
国策事業である京釜(キョンブ、ソウル〜釜山区間)高速鉄道事業の14工区を引き受けた大宇(テウ)建設は、昨年3月、釜山(プサン)北区庁(ペサンド区庁長)に、地下トンネルを開通するための事前作業の一つとして、グリーンベルト解除行為の許可を申請した。しかし、北区庁は、環境団体と住民らの反対を理由に、1年以上も許可を先送りしてきたが、「国策事業を承認せずにいる」という冷たい世論に押されて、今年4月に承認した。建設会社は1年間、莫大な財政的被害を受けた。
▲「行政(審判)訴訟がむしろさっぱりする」〓蔚山(ウルサン)市長は、中区太和洞(チュング・テファドン)にある太和楼の跡地に、38階の雑居ビルの建設が進められているが、法的に問題がないにもかかわらず、建設不許可の方針を固守している。民間業者が300億ウォン(約30億円)を投資して買い入れた同地域は、都市計画上の商業地域であるため、法的に問題がない。蔚山市側は「いっそのこと行政訴訟を起こして勝利すれば、許可する」と述べた。
そのせいか、自治体が対国民サービスに関連した訴訟で敗訴するケースが相次いでいる。慶尚南道(キョンサンナムド)のある自治体は、昨年11月に金氏が申請した医療施設(葬儀場)の新築許可を、交通に悪影響を及ぼすとの理由で許可しなかったが、今年3月の行政審判で敗訴した。大田市(テジョンシ)でも、類似の訴訟(行政審判)の件数が32件起こった。
昨年の27件に比べて18%もの増加だ。このうち9件で、自治体の過誤を認める審判が下された。これに関連し、忠南(チュンナム)大学の陸東一(ユク・ドンイル)教授(自治行政学科)は「自治体首長に集中している許認可権が実務者に渡され、担当者の意見が尊重されるようにすべきであり、地方議会の監視・けん制の機能が強化され、自治体首長の裁量権濫用を防がなければならない」と指摘した。