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[オピニオン]燃えるパリ

Posted November. 08, 2005 07:25,   

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東亜(トンア)日報の琴東根(クム・ドングン)パリ特派員は小柄ながらいい男だ。昨年、現地に赴任した時は、背が高く8つも年下の女性記者を嫁に迎え、独身記者たちの羨望の的になった。パリの貧民地域に暴動の取材に出かけた彼は、暴れる若者たちに暴行を受けた。「この近所で車が燃やされたと聞いたのですが…」と話したとたん乱暴されたという。琴特派員は、体の痛みより心の痛みが大きかったと話す。アフリカ系少年の死亡がきっかけで爆発した貧困や差別、疎外への移民者の怒りを、琴特派員は体で受けとめたわけだ。

◆2ヵ月前、ハリケーン・カトリーナが米国の古い人種問題を浮き彫りにした時も、フランスのマスコミは社会的統合の失敗を厳しく批判していた。自由・平等・博愛の精神を誇るフランスでは、もともと人種別の人口統計など、とりはしない。米国のように少数民族に恩恵を与える制度(affirmative action)はタブーとなっている。フランス国民は人種に関係なく同等の国民でなければならないという「共和国の価値」のためだ。

◆国民を保護するための「フランス・モデル」が、他の国民をさいなんでいるとは皮肉なことだ。米国にも数百万のイスラム教徒がいるが、社会からの疏外は欧州に比べ深刻ではない。労動市場が柔軟で、能力に応じて仕事に就けるからだ。一方、解雇の困難なフランスでは、労働者一人の雇用にも熟慮しなければならない。同じ資格や条件でもアラブ系やアフリカ系であれば、就職がより困難になるのもこうした理由からだ。仕事がなければ夢を失い、それが悪化すると、社会に対する敵がい心を燃やす。だから若い失業者があふれる社会は危険なわけだ。

◆左派知識人として著名なジェレミー・リフキンは、「アメリカン・ドリームはない」と述べ、ヨーロピアン・ドリームの勝利を宣言した。社会共同体の統合が経済発展に優先するという主張だ。彼はヨーロピアン・ドリームの成功を示す例として、アラブ系とアフリカ系の移民問題の解決を挙げている。しかし、彼らの現実と夢から目を背ける「欧州モデル」が、果たして効果的だといえるだろうか。成長と雇用のともなわない社会統合は幻に過ぎないことを、燃えるパリが示している。

金順徳(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com