『貴方のパラシュートはどんな色ですか。』(リチャード・N・ボールス)
終身雇用の概念が消え去った事実を知らない人はいない。しかし、求職は若い大学卒業生たちだけがすることだと思っている。これは異常で驚くべきことだ。転職と経歴の転換は、全てのサラリーマンたちが不安定な組織の中で、安全な自分を作っていく自己啓発の必然的な課程だ。
最近の話頭は、一つの職場の中で雇用安定性(job security)を高めるのでなく、市場での雇用可能性(employmentability)を高めることだ。職業と関連した自己啓発の核心は、自分をどこに出しても価値を認めてもらえるようなブランドに発展させていかなければならないということだ。
この本の要旨は明快だ。自分の望む良い職場で楽しく一生働きたいなら、三つの質問に答えられるよう自分を作って行かなければならないということ。
まずは、「何を」売ることができるかを知って準備しなければならない。これは生まれつきの自分の基本的な才能が何なのかを把握しなければならないという意味だ。人々は、自分が持っている素質を知覚できないでいる場合が多い。例えば、他人がどんな身なりをし、どんなアクセサリーをしていたか、詳しく記憶できる人がいるとしよう。彼は自ら「私は何の素質もない人」と思い込んでいるかも知れないが、そうではない。それが他ならぬ彼の特別な素質で、職業と連結して売ることのできる立派な財産だ。
二つ目は、「どこに」この素質を売るのかを決めなければならない。自分の好きな主題や興味を感じる分野を確認しろということだ。そして、この分野が実際に活用される職業がどこにあるか、情報を求め研究しろということだ。例えば、センスと記憶力が良い特性を持った人が、アクセサリーに関心を持っているなら、立派なアクセサリー・コーディネーターになれるだろう。才能は一つの職業にだけ限らず、複数の職業に転用できる。そのため、才能を「転用的素質(transferable skill)」とも言う。
三つ目は、最も働きたい組織に「どうやって」就職できるか、その方法を見つけ出すことだ。現在、その組織で人を必要とするかどうかは関係ない。会社に必ず必要だが採用しようとは思ってもなかったポストを提案すれば、会社は喜んで受入れるはずだ。必ず必要な新しい需要を作り出すこと。それが経歴のブルーオーションだ。
この本の最も大きなメリットは、この「どうやって」の部分が詳しく書き出されているという点だ。具体的でたいへん親切だ。そして革命的だ。しかし、この本を読む時に無くてはならない条件がある。絶対に最後まで読み通すこと。自分の忍耐心を試してみること。そうすれば、必ず報いてくれるものであるに違いない。