中国との間を往来して商売をする金チョルクォン氏のおじのK氏は、東海(トンヘ)沿いのある大都市の保安署(警察署)の幹部だ。軍で10年間勤務し、保安署に入ってからは、忠誠と清廉を原則として暮らし、昇進を続けた。しかし金はなく、妻が「あなたも他の人たちのようにワイロをもらっちゃいけないの?」と言うほどだった。
そのように暮らしていたK氏が、数年前から完全に変わってしまった。彼は最近、生活の半分は保安員、半分は貿易事業家だ。事務室には、日本と連絡を取るファックスも備えた。スポンサーは他にいて、日本から入ってくる品物を売る人もいる。彼のすることは、問題になりそうなことを自分で処理し、取り締まりを防ぐことだ。利益の50%以上は彼のもの。愛人も数人いる。
K氏は、金氏の家族に、「おまえも、自分で稼いで暮らせ」と事業資金を貸し、中国渡江証を発給した。K氏のおかげで、取り締まりで商品が没収されることもない。
金氏によると、K氏の変身は、数年前に出張に行ったさい、ある裕福な家で数日過ごしたことがきっかけだという。家に帰ってきたK氏が、「私は無駄に生きていたようだ」と、自分を責めたという。
K氏の場合のように、最近、北朝鮮は、「金を得ようとする権力階層」と「権力が必要な商人階層」の結託で、急速に腐敗している。実は、長い間、権力階層は、「無所不為(できないことは何もない)」の権力を行使し、北朝鮮で最も豊かな生活を享受してきた。
「党幹部は堂々と、軍隊は言葉少なに、安全部は安全に、保衛部は隠れて、ワイロを受け取る」
「小隊長は小さく、中隊長は中ぐらい、大隊長は大量に、連隊長は連続して、師団長は容赦なく、軍団長はあちこちで、金を手に入れる」
北朝鮮には、権力階層に対するこのような風刺が、数えきれないほど多い。
しかし最近、新興富裕者が続々と登場し、横領しワイロを受け取るだけでは、裕福な階層に入ることはできない。いい大学を出なくても、党に入党しなくても、金さえもうければ、一番人気の花ムコ候補だ。幹部の主な関心も、徐々に権力から金に移っている。
北朝鮮には、90年代初めに外国との貿易で裕福になった「新興富裕者」第1世代が出現したが、すぐに不正腐敗の温床だとして財産を没収され、銃殺されたり監獄に送られたりした。その時までは、権力は、すなわち天だった。
しかし、90年代半ばに襲った経済難で、権力階層のモラルは崩れ落ちた。
配給が途絶えると、清廉さで名高い金日成(キム・イルソン)大学の教授たちまでワイロを受け取って成績をごまかした。ワイロも露骨になった。今は、初めから権力を利用して金もうけに直接跳びこんでいる。
ロシアと北朝鮮を相手に商売をしてきた朝鮮族のチェ・キルボン氏は、「北朝鮮を見ると、中国やロシアは、ずっときれいな社会のように感じられる」と吐露した。
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