北朝鮮の科学技術分野の幹部が韓国に亡命申請したのに続き、北朝鮮人民軍の病院長も近く韓国に亡命する予定であることが明らかになった。
拉致脱北人権連帯の都希侖(ド・ヒユン)代表は19日、「北朝鮮の人民武力部所属の病院長を務めていたハン・ヨンイム氏(仮名・65・女性)が1月に北朝鮮から脱出し、現在、東南アジアのある国家に滞在しており、近く韓国に亡命する予定だ」と述べた。
都代表は、「北朝鮮で病院長を務めた人物が、韓国に亡命することは今回が初めて」とし、「ハン氏は、脱北者定着プログラムが十分になされていない米国よりも、韓国に来ることを望んでいる」ことを明らかにした。
▲北朝鮮入りから脱北へ〓ハン氏は、中国吉林省出身の朝鮮族で、1960年代半ばに南京で医大を卒業した。
当時、中国は文化大革命で、知識人に対するテロがしばしば発生していた。不安定な中国の状況に脅威を感じたハン氏は、医師や科学者、技術者などの専門家に対する優遇政策を展開していた北朝鮮に移住した。
1970年代後半から、北朝鮮で医師として活動したハン氏は、外科専門医として名声を得、北朝鮮の一般住民たちを治療する診療所や市郡級の人民病院を経て、人民武力部所属の病院に勤めることになった。
彼女は1980年代半ばに労働党に加入し、最近退職するまで人民武力部所属のある病院の院長を務め、党幹部たちはもとより金日成(キム・イルソン)主席や金正日(キム・ジョンイル)総書記の家族を診察していたという。
北朝鮮の高位層であるハン氏は北朝鮮体制への反感のため、脱北を決心した。中国にいる知人に韓国社会の発展や開放後の中国の変化に関する情報を聞いていたため、韓国の状況にも明るい方だ。
▲「崩壊した医療システムに失望」〓ハン氏の脱出は、苦難の連続だった。
ハン氏は中国の知人の助けで家族にも秘密にして家を出、人民軍の監視を避けるために一晩中山道を歩いた。何回も逮捕の危機に遭いながら国境を越えたものの、中国で脱北者の身分でいることは危険だった。
ハン氏は中国国内を転々とし、うわさをたよりに拉致脱北人権連帯に助けを要請した。同団体は彼女を保護し5月中旬、東南アジアのある国家に渡れるよう手配した。ハン氏は、東南アジアの国境で不審者の検問を受け、北朝鮮に送還される危機にあったが辛うじて危機を免れた。
彼女は、「北朝鮮では医師もお腹を空かせ、薬品を売り始めている。麻酔薬がないために、麻酔なしで治療することが日常茶飯事だ」と述べ、「街には飢え死にする人々が倒れ、薬がなくて、患者が死ぬのを放置するしかない状況に無気力になった」と周囲に明らかにした。
ハン氏は、北朝鮮は1980年代まで住民に対する無料の治療と教育を施行し、人民軍も医薬品を自主的に生産する体制を整えていたが1990年代以降、医療システムが崩壊したと伝えた。
彼女は、「北朝鮮の住民はもとより、党幹部たちも体制に対する不満が極度に達した状況だ。金正日が酒と女のほかに関心を持ったことがあるだろうか」と話した。
ハン氏は、「韓国は高齢者福祉に関心が高いと聞いた。韓国へ行けば、高齢者のための医療奉仕をしたい」と話している。
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