「官制所の積極的な協調と乗務員および乗客の落ち着いた対応で、危ない状況を免れることができました」
9日、稲妻を伴った雹に打たれ、機体の前部が丸ごと落ちてしまったアシアナ航空8942便の李チャンホ機長(45)と金ヨンイク副機長(40)は、危うい瞬間を思い出しながら謙遜に話した。
8942便航空機(エアバス321機種)は同日午後4時45分、乗客200人余りを乗せて済州(チェジュ)空港を発ち、金浦(キンポ)空港に向かった。
1時間ほど経って、飛行機が京畿道安養市(キョンギド・アニャンシ)の上空を通る時だった。「どんっ」という音が聞こえた。ピンポンと野球ボール大きさの雹が操縦席のガラス窓に降りかかった。窓にヒビが入り、前が見えなかった。
レーダー装置が取り付けられたノーズ・レドーム(Nose Radom=機体の前のとがった部分)が丸ごと落ちた。機体がひどく搖れた。自動飛行装置と自動出力装置まで故障した。
李機長は「ガラス窓が割れて前を全く見ることができず、文字どおり『晴天の霹靂(へきれき)』に打たれたようだった」と当時の心情を表現した。
李機長はマニュアルに従って、ただちに手動飛行(計器飛行)に切り替えた。引き続き、金浦空港の官制所に非常事態であることを知らせた。
速度計が壊れたため、官制所に速度と位置情報を問い続けた。空港官制所は他の航空機の離着陸を禁止させるなど万全の準備をした。
李機長は乗務員に「事故が起きたので、非常事態に備えて、乗客の動揺を和らげるように」と指示した。乗務員たちはあわてる乗客を落ち着かせ、不時着に備えた衝撃防止の姿勢を教えた。
李機長は官制所と無線交信をしながら、割れていない隣のガラス窓から滑走路を眺めた。ランディングギア(航空機タイヤ)の異常の有無を確認するために、高度を上げ下げした。
滑走路に着陸するかと思った飛行機が、金浦空港の上空にまた上がると、乗客たちはいらいらした。飛行機は午後6時14分頃、予定より15分程遅れて無事に着陸した。
乗客たちが「死ぬかもしれなかったところを無事に着陸させてくれてありがとう」とあいさつすると、李機長は胸をなでおろした。
李機長は1984年に空軍士官学校(32期)を卒業して、13年間戦闘機を飛行し、少佐として除隊した。1997年3月にアシアナ航空に入社し、6950時間の無事故飛行の記録を持っている。
李機長は「戦闘機は機動出撃が優先だが、旅客機は安全な運航が優先」とし「普段非常状況に備えたシミュレーション訓練をしてきて、危機を乗り越える自信があった」と話した。
一方、アシアナ航空は、機体の前部が稲妻ではなく雹のために破損したものと暫定的に結論を下した、と11日に明らかにした。
アシアナ航空は、李機長と金副機長に「ウェルダン」表彰を授与し、昇進させる方針だ。創社以来、たった1度授与した最高名誉賞だ。落ち着いた対応で乗客たちの大事な生命を守った点が高く評価された。
事故の原因究明に乗り出した建設交通部は、整備不良で機体が破損した可能性についても調査を行っている。
航空大学航空運航学科の宋炳欽(ソン・ビョンフム)教授は「外部の衝撃に強くて変形が起きにくい複合材料である航空機の機体が破損したのは、国内でとても珍しい現象だ」とし「機体の前部に雹を集中的に浴びたら、そのようなこともありうる」と話した。
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