「真夜中に3隻のボートが音もなく近づいてきました。素早く甲板に乗り込んで、銃を撃ち、船員を集合させました。そして、浜辺に向かえと怒鳴りつけました」
ソマリアで海賊に拉致され、101日ぶりに解放された船舶「セムロウ」号のタンザニア人機関長チュマ・ムイタ(50)さんが3日、ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで明らかにした拉致当時の状況だ。
セムロウ号は昨年6月、国連世界食糧計画(WFP)が提供した850トンの食糧を積んで、ソマリア北部に向かっていた時、陸地から55キロ離れた海上で海賊の攻撃を受けた。
「この海賊たちは、私が本で読んだ海賊よりも質が悪かった。品物を奪うだけでも足りず、莫大な身の代金まで要求しました。武装も完璧でした」
苦労の末に解放されたムイタさんは、「20年間船員として働き、行っていない所はありません。これからもどこへでも行くつもりですが、ソマリアの海岸には絶対に行きたくありません」と身震いした。
ムイタさんが話したソマリアの海賊は、去る4月4日、ドンウォン水産所属の遠洋漁船「第628ドンウォン号」を拉致した海賊と同じ組職と推定される。
ニューヨーク・タイムズ紙は3日付で、ソマリア海賊に抑留されている船舶は、ドンウォン号(船員25人)とパナマ船籍タンカー(19人)、グルジア貨物船(8人)の3隻だと報じた。また、ソマリア海賊は部族単位で動き、国民義勇海岸防衛隊、ソマリア海軍などの名称を使用する4つの派閥があると伝えた。
独自の組職体系を持ち、首領級を提督、副提督と呼ぶ彼らは、拉致した大型船舶を利用して、陸地から600キロも離れた海上まで進出する。
今年1月に米軍駆逐艦がだ捕したインド船舶「アル・ビサラート」号が代表的な例だ。船舶を強奪した海賊は、同船舶を母艦として遠海で海賊行為を行い、米軍に逮捕された。
現在、ケニアで裁判を受けている海賊組織員たちは、自分たちは平凡な漁夫であり、遭難してインド船舶に助けを求めただけだと主張している。
ソマリアの海岸で海賊が出没する理由は、長年の内戦で中央政府の治安体系が事実上崩壊したためだ。昨年初めから今年3月までに、同一帯で海賊が出没した回数は45件、19隻が海賊に拉致された。
いっぽう外交通商部は、抑留3ヵ月目になるドンウォン号の解放交渉と関連し、「船員たちはみな無事であり、解放交渉が終盤段階に入った」と明らかにした。外交部関係者は、「船員たちは船舶内にいて、船長のチェ・ソンシク氏だけ、陸地に抑留されている状態だ。一部の船員たちは、家族と電話で話をした」と説明した。
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