韓米自由貿易協定(FTA)阻止のための汎国民運動本部は、最近発刊した「韓米FTA国民報告書」で、韓米FTAを「韓国経済の米帝国主義への合併」と位置づけた。共同執筆者の一人であるソウル大学金セギュン教授は、「米国の超国的資本と内国の独占資本が、労働者、民衆と国民に対する搾取と収奪を強化するために展開する全面攻撃だ」と主張した。
韓国を「米国の植民地状態」と見て、反米階級闘争を扇動した1980年代の主思派運動圏の認識そのままである。このように時代遅れの本が初版(2000部)を印刷した後1ヵ月も経たないうちに再版を印刷したという。根強い左派の存在を実感させられる。
報告書でチェ・ヒョンイク・ハンシン大学教授は、韓米FTAを「共和国の主権を米帝国に割く、譲り渡そうとする主権の返上協定だ」として、「帝国主義に対抗する概念として到達すべき政治的目標を摘示するため、『共和国』という表現を使った」と明らかにした。「共和国」という表現は、北朝鮮が「社会主義国家は例外なく共和制の政体であるべきだ」という自己風の定義に従って使う用語だ。これをそのまま借りてきたものだ。さらに「到達すべき政治的目標」とは、社会主義国家でも建設するという意味か。
ぺ・ソンイン明知(ミョンジ)大学教授は、「韓米FTAの締結が韓米同盟の強化につながり、中国を疎外させ、北朝鮮の反発をもたらすことで、韓半島を軍事的脅威に追い込むだろう」という論理を展開した。左派勢力が在韓米軍の平沢(ピョンテク)移転に反対して打ち出した在韓米軍撤退を主張する論理と全く同じである。しかし、中国は韓国とのFTA締結に積極的に乗り出している。とすると、韓米FTAは駄目で、韓中FTAは推進すべきだというのか。
肝心の北朝鮮は、FTAに対してはこれまで沈黙を守っている。最近訪朝したナム・ソンウク高麗(コリョ)大学教授は、「北朝鮮にはまだFTAに対する概念がないようだ」と述べた。そのような点で親北・左派勢力の反FTA主張は、「北朝鮮よりもさらに親北的である」わけだ。このようなとんでもない反国家的な振る舞いをいつまでも見ていなければならないのか。