平凡な自動車整備工に比べて優秀な整備工の収入が多いのは自然だが、だからと言って、数百倍、数千倍の差は出ない。しかし、芸能人やスポーツ選手の場合、トップスターは天文学的な収入を上げる反面、残りのほとんどは食べていける程度稼ぐだけだ。どうしてこのようなことがおこるのだろうか。
◆これはスターが存在する市場の特殊性のためだ。スーパースターが登場するためには、第一に数人の平凡な人が非凡な1人に太刀打ちできなければならない。第二に多くの人がスターのサービスを安い価格で大量消費できなければならない。例えば、マイケル・ジョーダンより半分ぐらいしか上手でないバスケットボール選手の試合を3、4回見るのが、ジョーダンの試合を1回見るのと同じであるはずがない。また、ジョーダンの試合はケーブルテレビなどで誰もが格安に見られる。反面、整備工はいくら実力が優れても、彼のサービスを消費できる人が限られているため、スーパースターになれない。
◆米シカゴ大学のショーウィン・ローゼン教授は、このように1位はものすごい報酬をもらう反面、次点者ははるかに少ない報酬をもらう勝者独食の現象を分析して、「スーパースター経済学」と名付けた。スポーツや芸能界にのみスーパースターがいるわけではない。ナイキの靴、ウィンドウ2000、「ㅱ글」プログラムなども同じ原理が適用される場合だ。日本の経済評論家の大前健一氏は、「多様化の時代に選択事項が多ければ多いほど、選択がさらに難しくなって、メガヒット商品が登場する」とし、「情報技術(IT)の発達に伴って、専門経営人、医師、弁護士、コンサルタントなどの世界でもスーパースターが現われている」と主張した。
◆米国の映画会社パラマウントが、映画俳優のトム・クルーズと別れるなど、ハリウッドでスーパースター現象が退潮しているとニューヨーク・タイムズが報道した。トップスターの贅沢な私生活に羨ましさと共に妬みを感じた人なら、少しはすっきりするかも知れない。しかし、成功にやきもちを焼く雰囲気では発展は遅い。また、このようなことが起きるのはスーパースター経済理論が間違ったためではなく、「寄与に比べて身代金が法外に高くなった」という徹底した経済論理のためだ。
許承虎(ホ・スンホ)論説委員 tigera@donga.com