中国社会科学院辺彊史地研究中心(辺彊研究センター)の東北工程が、来年2月の終了を控え、その実体を露骨に表してきた。同プロジェクトの目標は、高句麗だけでなく、古朝鮮—夫餘—高句麗—渤海の歴史全体を狙っていることが明らかになった。
渤海史の侵奪は、高句麗の継承国家という点で、東北工程の初期から問題が提起されていた。古朝鮮侵奪は、辺彊研究センターが03年に発行した『古代中国高句麗歴史俗論』で確認できる。同書は、古朝鮮と高句麗民族は炎帝と黄帝の共通子孫を意味する炎黄氏族に由来しており、中国の歴史だと主張した。
また、東北工程の中心研究者たちは、韓民族を南部の韓族と北方の濊貊族に分離し、古朝鮮—夫餘—高句麗を濊貊族国家、新羅—高麗—朝鮮を韓族国家に区別すべきだと主張した。
そのため、昨年9月から辺彊研究センターのホームページに、これまで進められた18の研究テーマが要約されて掲載されたことは、新しい事実ではない。問題は、韓国政府が東北工程の総体的な問題点を把握せず、高句麗史だけに目を向けてなまぬるい対応をしている間に、中国はさらに大きな絵を描いていたという点だ。
韓国政府は04年8月、高句麗史問題に局限して、これを政治問題化せず、民間レベルの学術討論で解決していくという韓中外交部間の5項目の口頭合意だけを固く信じてきた。政府は、これを現象凍結だと主張したが、東北工程はすでに古朝鮮、夫餘、渤海史にまで移行した状況だった。
徐吉洙(ソ・ギルス、西京大学教授)高句麗研究会理事長は、政府のこのような態度に対し、「首都(歴史教科書改訂)だけ除いて全国土が蹂躙された状況で、侵略軍の休戦の約束だけを信じて、侵略された領土の収復を考えない態度だ」と批判した。
そのような状況にもかかわらず、高句麗研究財団に取って代わる韓国の北東アジア歴史財団は、発足すらしていない。東北工程に対抗する研究機関として04年に設立された高句麗研究財団は、先月解体された。中国との古代史問題だけでなく、日本との近現代史問題や独島(トクド、日本名=竹島)問題などに対する総合的国策研究機関として北東アジア歴史財団に吸収統合されるという名分だった。しかし、8月20日頃に発足予定だった北東アジア歴史財団は、1日に理事長だけを任命し、まだ機関名掲示式も行われていない。
さらに、財団の重心が中国よりも日本に傾いているという指摘も出ている。理事長に任命された金容徳(キム・ヨンドク)ソウル大学教授は日本史が専門だ。また、歴史研究室傘下の中国関連チームは1チームである一方、日本関連チームは2チームだ。
北東アジア歴史財団は、金秉準(キム・ビョンジュン)大統領政策室長(当時)が団長だった「北東アジア平和に向けた正しい歴史定立企画団」を事実上拡大改編した組職だ。また、同財団を外交通商部と教育人的資源部のどちらの傘下に置くかをめぐり論争を起したが、年を越えて5月になって法案が通過した。約1年に渡る同過程で、高句麗研究財団との位相定立問題が論争になり、身分の不安を感じた研究人力に動揺をもたらしたことも否定できない。
学界では、「攻撃は最大の防御」という点から、東北工程に対する政府の守勢的対応を一日も早く攻勢的に切り替えることを求めている。これは、古朝鮮—夫餘—高句麗—渤海を守る次元を超え、女真—契丹—蒙古の歴史まで、韓民族と共同の文明史的スペクトラムに拡張する韓国版「北方工程」を意味する。
姜友邦(カン・ウバン、美術史)梨花(イファ)女子大学招聘教授は、「6月、中国の瀋陽で開幕した『遼河文明展』は、中国が文明の起源となり、韓半島と満洲に渡る遼河文明まで盗もうとする意図をはっきりと示しているが、国内の学界では、依然としてこれに対する動きがない」話した。
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