ソウル世宗(セジョン)文化会館の大劇場で公演中の「ミス・サイゴン」は、世界「ビッグ4」ミュージカルの一つだ。むろん「ビッグ4」が必ず「ベスト4」を意味するわけではないが、時間を勝ち抜いた作品はそれだけの理由があることを、同作品は見せてくれる。
ベトナム戦争を背景に、米軍兵士クリスとベトナム人少女キムの愛を扱った「ミス・サイゴン」は、「オペラ座の怪人」、「キャッツ」、「レ・ミゼラブル」といった「ビッグ4」の他の作品と比べ、内容面で韓国人の情緒と現実に最も密接に迫ってくる。それだけ感情移入もしやすい。ミュージカルに初めて接する初心者の観客にはお勧めだ。
同作品のモチーフになったプッチーニのオペラ「蝶々夫人」のように、「ミス・サイゴン」も「叶わぬ恋」と「すべてを犠牲にする母性愛」を情緒の2軸に据える。ここに、ずる賢い人物「エンジニア」を通じて、歴史と社会の暗い断面を見せる。
新派のように感じられるかもしれないストーリーだが、観客の涙腺を刺激するには十分だ。女性観客の目を潤ませるのは、「クリスとキムの切ない恋」よりも、「息子タムへのキムの母性愛」だ。
「ミス・サイゴン」の代表曲は、「今も信じているわ」と「世界が終わる夜のように」だが、涙を誘う曲は、キムが息子を抱いて歌う「いのちをあげよう」と第2幕の後半部で自殺する前に息子に向かって歌う「私の心の中の小さな神」だ。
舞台に目を移せば、広くて、左右3メートルずつ捨てなければならない世宗文化会館大劇場よりも、城南(ソンナム)アートセンターの公演がより安定感を与えた。いっぽう俳優たちの歌と演技は、ソウル公演でさらに円熟味が増した。特に、事実上同作品の流れをつくる「エンジニア」役のリュ・チャンウは、城南公演と比べて、より図々しく卑屈なエンジニアの姿に近づいた。
金ボギョン、金アソンがダブルキャストの「キム」役は、金ボキョンの「キム」がよかった。金アソンは、高音が不安定で、後半部に進むほど力に余るが、少し子どものような声が弱点として指摘されていた金ボキョンは、終始パワフルで、感情のこもった歌で訴える力が溢れていた。
第1、2幕で、米軍兵士の相手をする半裸のベトナム女性や、タイ・バンコクの歓楽街のセックス観光の描写などが登場するため、幼い子ども連れの親は参考にしてほしい。英国では、「13歳以下」は保護者の観覧指導を勧めている。
「13才以上」10月1日まで。火〜金8時、土・日2時、7時。
平日3万3000〜12万1000ウォン、週末4万4000〜13万2000ウォン。
1588—7890
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