ガナアートセンタは1998年、ソウル鍾路区平倉洞(チョンノグ・ピョンチャンドン)にギャラリーをオープンした。
平倉洞は昔からに富裕層の住む住宅地で教育レベルが高く、芸術家も多く住んでいるところとして知られているところ。あえてここにギャラリーをオープンした理由でもある。
しかし、作品の鑑賞に訪れる住民は当初の予想よりはるかに少なかった。ギャラリーよりはレストランやカフェに多くの人々が集まった。
一体、何が問題だったのだろうか。ガナ・アートセンタの金ミラ部長は悩むばかりだった。ちょうどその時、銀行に出会った。
●「ギャラリーと銀行の出会い」
李インスン外換銀行(オイファン)平倉洞支店長は今月初め、店舗180坪のうち80坪を区切って「ミニギャラリー」を作った。それから、ガナ・アートセンタを尋ねていった。
「展示空間を無料で貸し出す上、絵画の購入客を直接ご紹介します。その代わり、ガナ・アートセンタの方で、いい絵画を選んで展示してください」。
このようにして銀行とギャラリーとの「同伴旅行」が始まった。自分の足りないところを相手からみつけることができるとの確信があったからだ。
銀行支店の競争力は、お金持ちの資産家などの「VIP」をどれほど確保するかにかかっている。しかし、お金持ちの資産家を誘致することはそれほどたやすいことではなかった。お金をつぎ込んで内装を変えても、彼らはすぐ嫌気をさすようになった。
李支店長は悩んだ末、ギャラリーのことを思い出し、銀行の店舗に展示場を出すところまでたどり着くようになった。
一方、ギャラリー側の悩みは、絵画を購入できるほどの余裕のある「お金持ちの客」を招くことがますます厳しくなったということだった。
キム部長は、「平倉洞住民たちに美術作品について多少とも説明すれば、すぐにでも夢中になりそうな感じは受けていたものの、なかなかその「一歩」を踏み出すのができなかった」と打ち明けた。その時、現れた銀行の手助けを受けることになったわけだ。
●自分で客に出向く芸術
銀行とギャラリーの提携を最初に試みたのは国民(グクミン)銀行。去年5月から、全国16のプライベットバンク(PB)センタで、絵画や彫刻を披露しはじめた。
ギャラリーの専門キューレータが、銀行の展示スペースに似合う作品を選んで1〜2ヶ月のサイクルで作品を変えた。常設展示場に劣らぬ展示スペースを、銀行の店舗のなかに作ったのだ。
国民銀行は客を相手にして美術品投資教室も開いた。顧客の資産管理の一環として、展示作品の販売まで念頭においた布石だった。
国民銀行での展示と教室を担当したのは「ピョ画廊」。このギャラリーは今年8月まで、国民銀行を通じて、20点あまりの絵画を売りさばいた。展示場には35点の作品しか展示できないが、国民銀行の16のPBセンタの展示スペースを活かして、250点あまりを消化することができた。
最近は、新韓(シンハン)銀行でも首都圏の9つのPBセンタで、3つのギャラリーとともに「ギャラリーバンク」を開いた。国内の有名な元老画家の作品を展示・販売しており、販売収益金の10%は、国連児童基金(UNICEF・ユニセフ)などの国際救援団体に寄付しているという。
●作家も変わった
新しい展示空間ができると、作家たちの参加も活発になった。
ピョ画廊は、国民銀行のPBセンタで「作家との対話」を非定期的に行っており、画家たちの参加の熱気が熱いという。それもそうなのが、銀行のPB客は少なくとも数億ウォンの金融資産を保有しているからだ。美術市場が取り込みたがる「潜在顧客」でもあるわけだ。
ピョ画廊のピョ・ミソン社長は、「PBセンタは作家たちが普段、接しがたい顧客と出会う高級社交場の役割を果たしている」と述べた。
外換銀行平倉洞支店には新進作家たちの個展の問い合わせが殺到している。金部長は、「若い専業作家たちが新しい顧客に自分の芸術世界をアピールするのにもっと積極的だ」と耳打ちした。
sanhkim@donga.com