北朝鮮が国際社会の警告を無視して核実験を強行した後、現代(ヒョンデ)グループの役員と社員たちは、沈痛で不安な表情を隠せずにいる。
安保危機が高まりつつ、対北朝鮮事業を引き受けている系列会社の現代峨山(アサン)が進めてきた金剛山(クムガンサン)観光と開城(ケソン)工業団地事業が、ややもするとすべて座礁する危機に処したからだ。
北朝鮮に対する国際社会の制裁が本格化すれば、韓国政府も北朝鮮を「懲戒」することが不可避で、その際、一番先に取り上げられる手段が開城工業団地と金剛山観光事業の中断だ。
これらの事業が中断されれば、現代峨山は致命的な打撃を被ることになる。状況の進み具合によっては、グループ全体の運命にも暗雲が垂れる危険性がある。
現代グループは金大中(キム・デジュン)政権後、徹底した事業性の検討を抜きにして、無理な対北朝鮮事業に「オールイン」して、すでにあまりにも多くのことを失った。その背景にはグループトップの独断的な判断と政治権力との「政経癒着」の現状があった。
現代グループは、「太陽政策」を推進した金大中政権と癒着し、2000年の南北首脳会談直前に4億5000万ドルを北朝鮮に不法送金した。同グループがこれまでに対北朝鮮事業に注ぎ込んだ資金は、これを含めた1兆5000億ウォンにのぼる。
しかし、これといった実益を得ることはできなかった。むしろ、グループは大きな損傷を被っており、不法対北朝鮮送金事件の捜査過程で、当時グループのトップだった鄭夢憲(チョン・モンホン)会長が自殺する不幸な事まで起った。最近は、北朝鮮が「利用価値」の無くなった現代を、主要事業から除外させようという動きも出ている。
ある大手企業の役員は、「対北朝鮮事業が失敗だという結論が出れば、現代グループは国家経済に大きな負担を与えたという否定的な評価を受けることになる」とし、「政治的な判断で無理な対北朝鮮投資を行い、その代価を痛いほど払っている」と指摘した。現代グループにとって対北朝鮮事業は、鶏肋(ケルク)のような存在という分析も出ている。
ある経済団体の関係者は、「政権を握っている勢力が対北朝鮮関係を国内政治に利用することにより、現代は身動きの取れない泥沼に陥った」と説明し、「これからは、対北朝鮮事業を放棄したくても放棄できない立場になった」と分析した。財界の一角では、「無理な太陽政策の最大被害者は現代グループ」だという言葉まで出ている。
李晩雨(イ・マンウ)高麗大学経営学科教授は、「現代グループの悲劇は、特定企業が政治的目的に利用される場合に、政治状況が変わればその企業は大きな危機に直面することになるということを見せている代表的な事例」だと指摘した。
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