ソウル衿川区(クムチョング)と九老区(クログ)にまたがっている加山洞(カサンドン)ハニル・ユーアンドアイマンション団地。
17日、外出から戻ってきたこのマンションの101棟に住んでいる主婦A氏(40)は、家中が散らかされているのを目にした。
泥棒に入られたわけだ。A氏はまず警備員に盗難のことを知らせたら、その警備員はちょうど107棟の空き巣被害の捜査に来ていた警察官に直ちに通報した。
ところが、現場で事件の通報を聞いた警官は難色を示した。107棟は行政区域上、九老区九老洞なので、九老警察署のクイル交番から出動したが、101棟は自分のところではなく衿川警察署の加山交番の管轄だというわけた。A氏は、事件を通報したければ改めて電話するように言われた。
A氏は、「同じ団地で同じ日、同じ時間帯に泥棒に入られたのに、警察署の管轄区域が違うから、ほかのところに通報しろなんて、ありえない」と不満をぶつけた。
同じ生活圏に住みながらも、行政区域が異なって様々な不便を強いられている住民たちがいる。宅地開発や道路建設などによって生活圏が分かれたり、行政区域の確定ミスによる「1団地、2区民」たちだ。
ソウル市内にはハニル・ユーアンドアイマンションを含め、「1団地、2区民」の地域が計5カ所ある。同じ団地に住みながらも、税金の支払いや学群、ゴミ袋の購入などは全部「別々」だ。
城東区下往十里(ソンドング・ハワンシムニ)と中区新堂洞(チュング・シンダンドン)に建てられたハンジン・グランビルマンションの住民たちは財産税を支払うときはお互いに違う区に住んでいることを実感する。中区と城東区が財産税の弾力税率をそれぞれ40%と10%と、別々に適用しているからだ。
中区に属している103棟の7階の33坪型(規準時価2億2000万ウォン)の持ち主は、今年、33万1500ウォンの財産税を払った。一方、城東区に属している101棟の7階の33坪型(基準時価2億1000万ウォン)の持ち主は40万4210ウォンを払わなければならなかった。
住商複合村を形成している冠岳区奉天洞(クァナクク・ポンチョンドン)や銅雀区新大方洞(トンジャクク・シンデバンドン)一帯のポラメ・ウソン、ウソン・キャラクタ、ヘテ・ポラメの3棟の6900あまりの世帯(冠岳区307世帯、銅雀区383世帯)も、隣近所や上層階の住民が属している区が異なっている。
電話局や郵便局、清掃などの業務は、どのように区域を決めればいいか悩んだ末、冠岳区と銅雀区がそれぞれ1棟ずつ担当することにした。そのため、冠岳区民でありながら、銅雀区の電話局に電話設置の申し込みをするなどの混乱が生じている。
このように住民の苦情が相次いでいても行政区域の調整や容易なことではない。中央政府や上級自治体が強制的にするわけにはいかないからだ。先に該当区役所の合意と区議会での可決が行われるべきだが、様々な地方税収入や人口などの区の勢力とかかわっているので、両方ともなかなか譲ろうとしない。
このため、ソウル市では区役所同士の仲裁に乗り出すことにした。行政副市長を委員長とする「境界調整推進委員会」も設置した。衿川区と九老区にまたがっているハニル・ユーアンドアイマンションが最初の調整対象になると見られる。
ソウル市・土地管理課のチョ・ボンヨン・チーム長は、「釜山市(プサンシ)が、隣の区役所に土地の移譲を決めた沙下区(サハグ)に1億3000万ウォンを支援した事例がある」とし、「行政区域の境界調整に積極的に協力する区役所には財政上のインセンティブを与える方策を考慮している」と述べた。
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