仁川市江華郡(インチョンシ・カンファグン)江華邑中央(チュンアン)市場。典型的な在来型市場の古びた建物の3階に大韓(テハン)体育館がある。
どこの田舍でも見られる体育館のようだが、ここに韓国一の女子テコンドーの有望株がいる。体育館に掲げられている各種国際大会での授賞式の写真とトロフィーが目を引く。
●181cm、70kg…筋力と基本技は男子レベル
江華女子高2年のアン・セボム(17・写真)。女子テコンドー選手では最上級の体格(181cm、70kg)であるアン選手は、08年北京五輪で金メダルを期待されている。
ユ・ビョングァン竜仁(ヨンイン)大テコンドー学科教授は、「女子選手は大半が1、2種の単調な技術しか持たず、タイミング本位の試合をする。しかし、セボムは筋力と基本技が男子に劣らない」と誉める。ユ教授は、「相手に合わせて多様な蹴りを全部駆使できる。短期成績にこだわらず、地道に技量をみがけば、世界の舞台でテコンドーの『スター』に浮上できるに違いない」と強調した。
アン・セボムの体格と技術を聞いてちょっと気後れがしたが、意外に彼女の印象はとてもやさしい。
「小学校1年生の時、テコンドーを始めました。当時は、ただ面白くてカッコよかったんです。中学校3年の時、アテネ五輪の中継放送でムン・デソン選手を見て、これに私の人生をかけると決心したのです」
アンを小学校時代から指導し国家代表にまで育てたヨム・クァンウ館長は、「外見はやさしいが、勝負欲がすごい。一つ教えてあげると、一人で2つ、3つをおぼえる」と話す。
中学3年以後、アンは毎日未明1時間ずつ、午後は、下校後2時間半ずつ、そして夕方にまた1時間ずつ、トレーニングをしている。
キックの姿がこの上なく頼もしいが、トレーニングをしながら心の痛む時も多かった。
「あまりにもたいへんで、やめたい時もあったけど、もっと耐えがたいのは審判の判定でした。私がいくら技を入れても得点にならない時も多かったんです」
慢性的な審判判定問題は、幼い選手にも大きな傷を与えた。ヨム館長は、「田舍の選手たちに不利な判定が多い。選手たちに、『君たちは同じレベルなら負けるんだ。相手を完全に圧倒しなければならない』と教えた。だから、ここの選手たちのほうが相対的に技術がすぐれている」と説明した。
●蹴りは自由自在…五輪で金を期待
アン・セボムには最近、また新しい悩みがある。
3年生になるセボムを、大学と実業団が連れて行こうと熾烈なスカウト競争を繰り広げているのだ。奨学金や、国際大会でのメダル獲得時の教授職保障や年俸、褒賞金など様々な提案をして両親を説得している。
「北京五輪で金メダルを首にかけ、館長と両親を抱き締めてあげたい」と言うアン・セボム。このため、まず今年は、2月の国家代表最終選抜戦で優勝し、世界選手権で金メダルを取るのが目標だ。17歳の少女にとって、07年は夢をかなえる重要な1年だ。
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