一時「モータウン(モーター・Motorとタウン・Townの合成語)」という異名で呼ばれていた米デトロイト。しかし、いまでは衰退したこの都市の外郭に、自動車帝国の復活を夢見る人々の「オアシス」がある。
つまりゼネラルモーターズ(GM)−全米自動車労組(UAW)の人材開発センターだ。
今月19日に訪ねた同センターの裏側には、イリー湖に流れ込む美しい川の風景が広がっていた。同センターは地下の駐車場だけでも900台の車を止められる超大型の規模で、毎年3000〜4000人にのぼるGMの労組員らがここに来て、自動車の品質向上のためのトレーニングや現場の安全教育などを受ける。
GMとUAWが01年、労使の共生を祈りながら建てた同ビルには、全世界からひっきりなしに訪問客が訪れている。
センターに設けられた数十室の講義室と討論室、400人以上を収容できる大型の講堂などで、労使は技術のトレーニング、安全教育、社内の関係向上に向けたプログラムなどを共に運営していた。
そのうち最も目立ったものはビルの1階にずらりと並んでいるGM工場の再現施設。
「現場の職員らを対象にした作業場教育を行うために作っておいたトレーニングルームです。床にひかれた赤色・黄色のセーフティーラインからビルの3階までふき抜けになっている天井に至るまで、本物の現場をそのまま真似て作ったものです」(マーク・ストロールGM国際担当職員)
GMの職員らは、保眼鏡を着用する簡単な安全規則の順守から、作業場のロボットをどう操作すればさらに効率的かつ安全に仕事ができるか、どういう姿勢で働けば身体に最も少ない負担がかかるかなど、現場で生産効率性と安全性を高められる具体的な諸要領を体得する。
これらのプログラムは、「SPQRC」という大原則のもとにUAWが開発、運営している。「SPQRC」とは、安全(Safety)、人間(People)、質(Quality)、対応(Responsiveness)、費用(Cost)を意味する。
GM労組は今後、商品の開発と経営戦略に至るまで、さらに積極的な意見を出していく計画だとした。