年配の世代にとって、「統一戦線」とはすっかり耳慣れした言葉で、陳腐な感じさえ受ける用語だ。共産主義革命戦術である統一戦線は、目的のために利害関係をともにする組職や階級と一時的に連合する戦術的な同盟だ。ロシア革命直後にコミンテルン（共産主義インタ−ナショナル）による欧州での共産革命が挫折すると、社会民主党と提携を試みたのが始まりだ。韓国では１９４６年に朝鮮共産党の主導で左寄りの政党と社会団体が結成した民主主義民族戦線が最初だ。北朝鮮は韓国の赤化を狙った統一戦線戦略を一時も捨てたことがない。
◆北朝鮮が新年の共同社説で「今年韓国の大統領選挙をきっかけに売国的な親米反動の保守勢力を決定的につぶしてしまうための闘争をさらに力強く繰り広げていかなければならない」とした指針も、韓国国内の統一戦線を利用しようとする手口だ。朝鮮労働党の統一戦線部は、金大中（キム・デジュン）政権の時から、韓国国内の北朝鮮寄りの政権や左派勢力と一体となって統一戦線を繰り広げる「三位一体の戦略」を用いている。この戦略は相当な成果を上げた。親北朝鮮の左派団体が横行する今日の現実がその証拠だ。
◆慶尚南道（キョンサンナムド）地域の民主労総（全国民主労働組合労連盟）や全国農民会総連盟など１５０余りの、いわゆる各進歩団体が加入した慶南進歩連合が、幹部向けの教育用資料集に「統一戦線構築の原則」を紹介し、警察が捜査中だ。北朝鮮・統一戦線部傘下の対南革命前衛隊のホームページである「救国戦線」に提示された内容をそのまま移したものだ。「広範な民衆が参加する時、統一戦線はよりいっそう威力をもち、労・農同盟をさらに堅固にしていく中で広範な中問層勢力を結束させていかなければならない」というのが骨子だ。
◆慶南進歩連合の責任者は「統一関連団体などのサイトから抜粹したもので、救国戦線については知らない」と話した。偽りでなければ、中途半端な進歩であることを自認するに等しい。統一戦線の主導勢力は、敵との戦いに勝利した後、戦利品を独占するために一緒に闘争した同盟勢力を再び敵に回し、また他の統一戦線のスケープゴートにする。北朝鮮の統一戦線戦略に付和雷同する親北朝鮮左派は、この点をしっかり認識しなければならない。
権順沢（クォン・スンテク）論説委員 maypole@donga.com
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