大統領府は、李海瓚(イ・へチャン)元首相(大統領政務特別補佐官)の訪朝に前後し、南北首脳会談推進のための特使説を繰り返し否定した。しかし、李元首相と同行した与党ヨルリン・ウリ党の李華泳(イ・ファヨン)議員は、「北朝鮮と首脳会談の状況について意見を交わしたのは、かなりの部分、大統領の意向があったと考えていい」と述べた。首脳会談の主体はあくまでも大統領なのに、大統領府が一貫して否定する態度は釈然としない。
南北首脳会談が密室で論議されれば、国民の不信を買いやすい。李元首相の訪朝目的が何であるのかから詳らかにするのが正道だ。北朝鮮は今回も首脳会談を受け入れることを条件に、経済的支援を要求するだろう。その負担は4800万の国民に跳ね返る。国民は見せ物を見て見物料を払えということか。
大統領府と与党の南北首脳会談の「企画」は、いま与党が直面している悲惨な状況と無関係ではない。野党ハンナラ党の大統領候補たちの支持率は高い一方、与党は支離滅裂な状態であり、南北首脳会談を反転の契機にしたいのだろう。「平和勢力」という言葉にはバブルが多く、落とし穴も多く、国民へのまやかしまで潜んでいるが、要点だけを述べてこの四文字ばかり掲げ、反ハンナラ新党統合を果たし、論点を先に獲得する手段として使いたいのだろう。しかし、南北首脳会談を通じて韓半島和平ムードを高めるとしても、「過去、現在、未来の核」をすべて廃棄させることができなければ、韓国国民は結局「平和イベントの費用と核の恐怖費用」を支払うほかない。首脳会談を含む南北関係は、北朝鮮の核廃棄に向けた6者協議の枠内で方向と速度を調整しなければならない。
李元首相は、「冬季オリンピックを南北が共同開催する案を提案し、北朝鮮側も肯定的だった」と述べた。しかし、金ジンソン江原道(カンウォンド)知事は、「共同開催はできないということを前提に、昨年11月に、北朝鮮側から平昌(ピョンチャン)開催支持の合意書を受けた。李元首相は訪朝前に、江原道と一切相談していない」と話した。不必要な混乱が憂慮される。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は、国民が負担する費用に比べて効果が不確実な南北首脳会談よりも、交渉が最終段階に入った韓米自由貿易協定(FTA)の成功に邁進するのが、国家的次元から見て望ましい。韓米が合意した交渉期限である来月2日まで、時間はあまりない。全国民主労働組合総連盟や農民の反対も激しい。彼らを説得し、国内の補完対策を推進することだけでも困難な課題だ。
選挙用の政略という疑念をぬぐうことができない南北首脳会談と違い、韓米FTAが妥結されれば、盧大統領の最大の功績になるだろう。盧大統領がすべてをかけなければならない課題が何かは自明である。