韓国と米国の自由貿易協定(FTA)交渉が妥結したというニュースにもっとも驚いたのは隣国の日本と中国だ。韓国が米国との統合市場を足場に、北東アジアの通商拠点として急浮上するのを日中は恐れているのだ。長期不況から脱し、再跳躍している日本は、北米市場で韓国に押され、自動車、電気電子分野での優位を失うのではないかと懸念している。中国からも「韓米FTAが韓国の国際的な地位向上につながる」という声が聞こえている。
日本のマスコミは、日本が「FTA後進国」であることを認めた上で、政府が米国とのFTA交渉に積極的に乗り出すことを促した。しかし、日本政府は韓国のように、「農産物市場の開放は避けられない」とは言いにくい立場にある。7月の参議院選挙を前にFTAをめぐる議論すらタブーになっている。このように悪条件がそろっているにも関わらず、経済専門家は「韓米FTAのショック」をあらわにしながら、「これ以上FTA交渉は避けられない」と力説している。早稲田大学の浦田秀次郎教授は、「韓国が今の勢いを加速させて欧州連合(EU)ともFTA交渉に入れば、日本はFTAからさらに取り残される」と憂慮をあらわにした。
日本や中国の専門家らは韓国とのFTAを急がなければならないというコメントも欠かさない。塩崎恭久官房長官は「(2004年から中断している)韓日FTA交渉にはいつでも応じる用意がある」と述べた。ある中国研究員は、学術大会で会った韓国の参加者に「韓国はなぜ、中国とのFTAを後回しにしているのか」と不満の混じった質問をしたという。
隣の両経済大国が韓国にあやかりたいといっているのに、韓国の反FTA運動家たちは、韓米FTA締結を、「経済主権の喪失」と表現するなど、納得できない誹謗に明け暮れている。民主労働党は「国の屈辱」と、参与連帯は「通商クーデター」という表現を使った。韓米FTA阻止汎国民運動本部は、夜を徹して血のにじむような交渉をした韓国の交渉代表に「外見だけ韓国の官僚で、実際は米国の官僚」という暴言を投げつけ、「売国的な交渉だ」と主張した。朝鮮王朝末期の鎖国政策の象徴だった興宣大院君(朝鮮第26代王の父親)の亡霊がよみがえったような印象を与える。
今は、「一つのFTA交渉がまた妥結し、数千件の交渉が進められている」といわれるFTA時代である。米国との「通商協力」を軌道に乗せて貿易大国に成長し、中国と日本の板ばさみから脱するのは、大韓民国の最重要課題の一つである。