韓米自由貿易協定(FTA)の合意内容の大枠は公開されたものの、一部の項目の解釈をめぐって議論が巻き起こっている。FTA反対派が「毒素条項」だと攻撃する項目もあり、政府発表と専門家の評価が食い違う部分もある。
代表的なのが投資者−国家間訴訟制(ISD)だ。ISDは外国に投資した企業が投資国政府の政策のために被害を被った場合、当該国家を国際投資紛争仲裁センター(ICSID)に提訴できるようにした制度だ。
交渉結果によれば、公衆保健、環境、安全、不動産価格の安定化、租税政策はISDの適用対象から外されているが、「政府の措置が極度に行過ぎた場合」には例外的に提訴の対象になる。
ISDは「両刃の剣」だ。韓国の投資者は海外でこれを活用して保護を受けられるが、外国人投資者や投機筋も同じく韓国の政策に是非をかけることもできる。突拍子もない訴訟を起こされたり敗訴するようなことがないように徹底して備えるしかない。
FTA反対論者が取り上げてきた米国の有害物廃棄業者のメタルクレードの例が、他山の石になるだろう。同社はメキシコ政府の許可を得て埋立地を建設したが、地下水の汚染問題で地方政府によって許可を取り下げられると、メキシコ政府を提訴して1600万ドルを補償を受けるのに成功した。
ISDのように疑惑が提起された部分に対しては、政府は詳しい内容を透明に説明して、誤解の余地を予め無くすべきだ。5月に予定されている協定内容の公式発表の前でも補足説明をした方がよい。自動車分野での交渉で一般の手続きより速い「迅速紛争解決手続き」を導入したことが、現実的に我々に不利なのか有利なのかについても意見を示さなければならない。
米議会はFTA交渉結果の通報を受けて、30日以内に33の諮問委員会がFTA分野別検討意見書を提出するようにしている。韓国の議会も、米国の方式を援用して各界の専門家らが客観的に交渉の結果を検討できるようにする必要がある。
一昨日に開かれた国会の統一外交通商委と農林海洋水産委の全体会議で、FTA交渉結果に対する聴聞会、国政調査を実施すべきだという声が上がった。しかし、非生産的な文句をつけるための聴聞会を開くのは決して望ましくない。