「全国区はありきたりの風邪にもかからない」。全国区(比例代表)予備候補が議員職を受け継ぐためには、全国区の議員が進んで離党するか、でなければ「故人」にならなければならないが、故人どころか風邪にもかからないという意味だ。この「明言」の知的所有権者は李訓平(イ・フンピョン)元民主党議員。15代の時、全国区の順位16位で予備候補だった李氏も、金ハンギル議員が大統領政務首席秘書官に席を移してから、待ち望んでいた議員職を受け継ぐことができた。
◆李元議員の言葉を覆してみると、全国区議員の自主的な離党は「故人」になるより期待しにくいという意味にもなる。そのまま離党すれば、議員職を失うからだ。野党ハンナラ党の崔秉烈(チェ・ビョンリョル)元代表は、全国区を「天国区」と表現したこともある。国会議員としての特権は全部享受しながらも、地域区の管理で頭を悩ませることもないから、「天国区」に他ならないということだ。だから、全国区を自ら返納する人がいるはずもない。
◆議員職を維持しながら党を離れる道は「放党」だけだ。党から追い出されるのだ。しかし、そのように心の優しい政党はない。ハンナラ党が03年、党論を拒否した金洪信(キム・ホンシン)議員に放党措置の代わりに「党員権停止」の決定を下したのもそのためだった。与党ヨルリン・ウリ党の創党時には、旧民主党本部に「恩知らずの全国区議員は民主党を離れろ」という垂れ幕がかけられたりもした。心は新党に行っているのに、体だけ民主党に残っていた全国区の議員を標的にしたものだった。
◆ところが、異変が起こった。ヨルリン・ウリ党の丁世均(チョン・セギュン)議長が最近、全国区議員らに新しい統合新党の立ち上げのため、黜党も認める可能性があることを示唆したという。聞いたこともなければ見たこともない「意図的放党」だ。代議制の原則や政治の道義はどうでもいいという発想だ。しかも、現国会の全国区は政党名簿制で選ばれた議員だ。過去とは違い、有権者の政党投票を通じて選ばれた議員ということだ。民主主義と政党政治の原則まで無視してどんな新しい政治をやると言っているのか、ウリ党の「本当の姿」が露呈するだけだ。
金昌赫(キム・チャンヒョク)論説委員 chang@donga.com