政府は昨日の閣議で、250兆ウォンを上回る来年度予算案と基金運用計画案の指針を確定した。今年の総支出より7〜8%増加した規模であり、増加率が6年ぶりに最高となる見通しだ。予算が大幅に増加する分野は、福祉の拡大、韓米自由貿易協定(FTA)の補完対策、2段階均衡発展計画などだ。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は、「小さな政府」ではなく「責任ある政府」を志向するという名分のもと、財政支出と公務員数を大幅に増やす「大きな政府」づくりに忙しい。大統領府は定例会見で、「支出予算で見た歴代政府の性格比較」という最近の報告書で「歴代政府と違って参加型政府は、福祉予算の比重を20%から28%に増やし、経済分野(18%)を追い越させた」と誇る。福祉予算を非効率的に執行すれば、経済・社会的な実を育てるうえで貢献できず、あるものを分け合うのに終わるのがおちである。
財政が漏れる穴がどれほど多いかは、韓国社会を少し見回しただけでもわかる。農村には、多くの米穀総合処理場の施設が空っぽの状態だ。全国米穀処理場の施設容量は2600万トンで、国内の年間コメ生産量500万トンの5倍を上回るためだ。活用率が低いため当然赤字である。監査院は、米穀処理場で浪費された予算は約1300億ウォンにのぼると指摘した。保管する物量がなく、子どもの遊び場になってしまった農産物低温貯蔵庫も1つや2つではない。
農村には、「あぶく銭」が出回っているという話が公然となされている。1994年のウルグアイラウンド(UR)妥結後、政府が投入した60兆ウォン以上の農・漁村構造調整資金がそれに一役買った。来年度予算から韓米FTA妥結による被害産業支援が予定されている。本当の構造調整ではない税金分配式の支援であり、農村や農業問題をさらに悪化させる恐れがある。「開放による産業構造先進化」を目標とするFTAが、農村で産業と市場の作動原理を後退させる結果を生む恐れもある。
ある企業家は、「政策資金は麻薬だ」と言って、このように付け加えた。「一度もらって使うと中毒になる。苦労して事業する考えもなく、それだけを求めるようになる。ベンチャー資金、中小企業支援資金、産業資源部先端事業資金、京畿道(キョンギド)政策資金を順に使っている企業もある。公務員が掌握する金があまりにも多い」。このような企業は、生産と営業で利益を出そうとするよりも、「政策資金申請書」をうまく作成することで、援助を得ようとする。「あぶく銭」で暮らす生態系を支えるのは、納税者の血と汗とため息である。
血税が漏れる所は、列挙すればきりがない。次世代の国家成長動力事業というDMB技術開発の場合、産業資源部と情報通信部が主導権争いをし、それぞれ技術開発に乗り出して、関連事業を別途発注した。国家競争力までむしばむ行為である。政府の「ビジョン2030」では、保健福祉部の障害者選択的福祉事業と女性家族部の障害家庭児童養育支援が重複する。このようにいくつかの部門で、福祉支出の重複が生じている。
財政が豊かな地方自治体は毎年、なんの問題もない歩道ブロックを交換する。予算を残せば翌年の予算が削減されるためだ。ソウルのある区役所は、外賓用として3300cc級の乗用車「エックス」を購入したが、倉庫に入ったままになっている。ソウル郵便集中局は、小包を車に積むベルトコンベアーを購入したが、3回使っただけで廃棄した。規格が合わなかったためだ。京畿道のある都市は、政府中央庁舍よりも大きな市庁舎を建てた。
このすべてが、公共部門の深刻なモラルハザード(道徳的弛緩)を示す事例である。自分の懐の金なら、このように浪費するはずがない。公共部門は元来、主体性が足りない。競争もなく、倒産する心配もない。経営マインドに欠け、費用概念が希薄だ。一生懸命働くインセンティブも不十分だ。目標を評価するのも複雑で、多くの機関が関与しているうえ、人事も頻繁で、責任素材を明確にすることも難しい。
公的モラルハザードを予防する最も良い方法は、「民間ができることは民間に任せる」ことだ。すなわち「小さな政府」である。民間に任せられないことは、成果を厳密に検証する装置づくりが必要だ。いくら趣旨が良くても、過程と結果の透明性の面で少しでも躊躇(ちゅうちょ)するなら、手を引いたほうがいい。制度の誤りで起きる公共資源の浪費は、それだけでも大きな問題だが、関連効果が大きいため、市場全体の低効率と奇形化を生む。公共のモラルハザードを助長する行政は、納税者である国民に負担を強い、民生を害する公共の敵である。