米国警察の科学捜査チームの活動を素材としたCBSのテレビ連続ドラマ「CSI科学捜査隊」は、米国ドラマブームの震源地だ。指紋鑑識家や法医学者、解剖医、証拠追跡専門家などからなる捜査隊が先端装備や高度の手法を動員して、犯罪を暴いていく過程は、手に汗を握らせる。エミー賞を3回も受賞するほど作品性も高い。このようなドラマを通じて、先端科学捜査に見慣れた韓国視聴者は、韓国の警察にも同程度のことをしてほしいと思う。
◆済州(チェジュ)の小学生ヤン・ジスンさん誘拐・殺害事件の捜査は、そのような期待を見事に裏切った。ジスンさんは自宅から120メートル離れた果樹園内のプレハブで、誘拐犯に性的な暴行を受けた後、殺害され、遺体は現場に隠された。3年間、このプレハブで暮らしてきた犯人は、子供誘拐未遂を含めて前科23犯だった。警察は述べ3万4000人余りを動員して周辺を捜索したものの、40日間遺体すら見つけられず、さまよった。同種の前科者を対象に聞き取り捜査すらしっかり行なわなかったという、基本のできていない捜査をしたためだ。
◆財閥HグループのK会長がボディー・ガードを動員して、息子を殴った人たちに仕返しの暴行を加えたという疑惑事件も同じだ。警察は先月9日夜、ソウル市内のある居酒屋で事件が発生したという連絡を受けて現場に出動したものの、双方が和解したという理由で、容疑者らを立件しなかった。初動捜査から間違っていたわけだ。警察は事件がメディアに公開されるや、関係者たちに出席要求書を送った。典型的な後祭りだ。警察首脳部の出身者が事件の隠蔽に口出ししたという話しすら出回るのを見ると、警察がK会長を意識して、事件を隠そうとしたと疑われても仕方がない。
◆二つの事件は、警察の規律の緩みや無能という側面で、共通点が多い。とりわけ、ジスンさんの事件は仁川(インチョン)小学生朴君誘拐殺害事件で国民が驚いている時に発生した。相次ぐ誘拐事件で、親たちは不安におののいている。犯罪から国民を保護できない警察が、捜査権独立だけを叫ぶとしたら、どれほどの支持を取り付けられるだろうか。
権順澤(クォン・スンテク)論説委員maypole@donga.com