非正社員労働者への差別を禁じ、2年以上非正規職を雇用すれば正規職化するという「非正規職保護3法」の実施が来月1日に迫った。労働部は事業場の規模によって段階的に適用する「差別禁止ガイドライン」を出したものの、労使両方とも不満なようだ。
非正規職の賃金は正規職の64%の水準だ。職場内での様々な福祉や社会保険への加入比率ではさらに劣悪だ。同じ仕事をしているのに、このように差別を受ける「2等労働者」が全体労働者の37%にも達している。
だからといって「心情」だけで近づくと、事態はさらにこじれるだろう。「2年以上の勤務者の正規職化」は2年後の09年7月から適用されるのに、各企業では早くも非正規職の採用を嫌がっている。非正規職から目をそむけているのに、正規職の採用を増やすわけがない。一部の公企業や地方自治体では早くも非正規職の解雇に乗り出している。
大企業では競争力の維持のため、非正規職が勤務期間が2年を満たさないうちに、多くの人々を解雇するしかないと本音を打ち明けている。非正規職の保護のために作った法律が、逆に非正規職を解雇に追い込んでいるわけだ。非正規職の59%は、「自分の最も必要なことは雇用安定だ」と答える。彼らの66%は「非正規職法の施行の際の失職の可能性が最も怖い」という心情を吐露した。差別の是正もさることながら、ややもすれば、働き口のない外観だけの平等になりかねない。このような事情を十分分かっているはずの全国民主労働組合総連盟が、「差別是正への意志が弱い」と非正規職法に反発するのは、表裏のあわない二重プレーだ。
大企業の労組が高い賃金や定年保証の雇用で企業経営を圧迫し、企業では非正規職を増やして人件費を減らさざるを得なかった。非正規職問題の根本にあるともいえる正規職労組が、労働条件においてある程度は譲歩しなければ、現実的に非正規職への差別は是正しがたい。
問題の円満な解決のためには、正規職の解雇が柔軟にならなければならない。でなければ、企業は正規職の採用も非正規職の正規職化も避けるだろう。企業や労働者、経済が共に生きる道を模索すべきだ。