金成浩(キム・ソンホ)法務部長官の「自主辞任」で、大統領府としては、痛い歯が自然に抜けた。金長官の在任11ヵ月間は、昨年8月30日の就任直後から順調ではないことが予告されていた。大統領府が、東亜(トンア)日報のインタビューを問題視し、金長官を「口頭警告」した。事実上禁止されていた保守マスコミと接触して、にらまれたのだ。
金長官は、相次いで左派的経済政策路線に反する親企業的な発言をし、大統領府の386世代をいら立たせた。金長官は昨年12月、記者懇談会で、「過去の粉飾会計を自ら改める企業に対しては、起訴猶予などの最大限の寛容措置を取る」と述べた。今年1月、本紙とのインタビューでは、「不法デモに対する無寛容原則を例外なく貫徹する」と警告した。1、2月の経済団体懇談会では、「声が大きければ勝ち、不法ストライキをすれば給料が上がる誤った慣行が払しょくされなければならない」「企業にやさしい法的環境をつくる」と所信発言を続けた。みな経済を活性化させ、不法暴力デモの根を絶つという意志を示したもので、国民の拍手を受ける発言だった。
6月11日、金長官と大統領府の「コード対立」は絶頂に達した。国会対政府質問に対し、「(選管が盧武鉉大統領の発言を問題視した)選挙法9条『公務員の選挙中立義務』規定が違憲だとは思わない」と答えた。盧大統領がわずか3日前、「世界で類例のない偽善的な法」と非難したのと正反対の解釈だ。大統領府に「もうだめだ」という気流がこの頃形成されたという。しかし金長官の発言は、憲法裁判所の決定と中央選管の法律解釈が一致したことで、法務部長官としては当然すべき発言だった。
先月12日、ハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)、朴槿惠(パク・グンヘ)大統領選挙陣営の告訴事件について、「告訴を取り消せば、検察が捜査しないのは正しい」と言ったことも、大統領府の気分を害したとされる。大統領府は、金長官を更迭して「義人」にしてやるか、留任させて「歯痛」を抱えるか、進退きわまったようだ。金長官が自ら退く意思を表明すると、大統領府は「圧力はなかった」と否定した。現政権は、「コード」だけを求め、民意の離反を招いても、相変らずわかっていない。