卞良均(ピョン・ヤンギュン)前大統領府政策室長が「イェール大学博士号」を詐称した申貞娥(シン・ジョンア)元助教授を2005年8月以前の時点で東国(トングク)大学教授に推薦していたことが明るみに出た。これで、申元助教授の教授任用の過程が少しずつ明らかになっている。
当時の洪起三(ホン・ギサム)東国大総長は11日、検察で「2005年9月、芸術学部・美術史学科の新任教授の任用公募を出したら、卞前室長が『大学の後輩で有能なキュレーター』と推薦した」と話した。
これは、東国大・真相調査委員会が7月20日、「(捜査の結果)外部からの圧力はなく、申元助教授が提出した書類をきちんと確認しなかった学校の過失」とした発表とは相反する内容だ。
少なくとも、申元助教授が自力で教授に任用されたのではないということが確認されただけに、検察は卞前室長が「推薦」にとどまらず「圧力」をかけていたかどうかの確認に捜査力を集中している。
申元助教授が東国大の教授に任用されるまでの過程には釈然としない点が多い。これまで仏教美術を専攻した人が任用されてきた美術史学科の教授として西洋美術専攻者が任用されたのは、申氏が初めてで、任用当時から論争を呼んでいた。
芸術学部の教授らは、申氏の教授任用後、申氏の博士号が偽造された可能性があるとして学校に真相調査を求めていた。
しかし、東国大は「独自で検証した結果、何の問題もない」とし、6ヵ月間休職していた申元助教授を、芸術学部ではなく、教養教育院の教授として復職させた。
申氏を教授に任用するために、何度も無理な決断を下したわけだ。
敬けんな仏教信者である卞前室長と洪前総長は04年6月、仏教宗派の曹渓宗・中央信徒会の教理講義準備会の共同代表を共に務めるなど、懇意な間柄だったという。
ただ、依然として解明されていない部分もある。洪前総長と卞前室長の個人的な「よしみ」では片付けられない、より大きな力が働いたのではないか、ということだ。
まず、洪前総長が当時、企画予算処長官だった卞氏から、申氏を教授に任用する見返りとして国家予算による支援の約束を取り付けた可能性もある。年間200兆ウォンに達する国家予算の配分権を持ち、政府内で大きな影響力を及ぼす企画予算処長官の「頼み」を断ることができなかったのではないかという見解だ。
検察では、大学が企画予算処を介せば、国家予算の支援を受けるのはそれほど難しいことではないはずだとみている。
また、卞氏のほかに「圧力の実体」がいるのではないか、という疑念も残る。洪前総長がとうてい拒否できない状況に追い込まれていたのではないかという疑念である。
検察は、卞氏が申元助教授を任用する見返りとして東国大に予算を支援してきたことが確認されれば、職権乱用などの疑いで刑事処罰できると見ている。
needjung@donga.com