古代中東では、イチジクやアーモンドの木を街路樹として植え、通りかかる人々が実をとって食べられるようにしていたという。中国の周は、桃の木、スモモの木を植えた。朝鮮の太宗(テジョン、1367〜1422)は1405年、漢陽(ハンヤン、ソウルの旧名)の街路沿いに木を植えるようにしたといわれるが、どんな木だったのかは記録にない。このごろの街路樹は、気温を2〜6度低下させ、湿度は9〜23%高める上、1本の木から4人が吸う量の酸素まで供給してくれる。ありがたい存在だ。年間街路樹管理予算は、一本6000ウォンほどだ。
◆韓国で美しい街路樹として有名なのが、慶釜(キョンブ)高速道路の清州(チョンジュ)インターチェンジから清州市江西洞(カンソドン)のパンソン橋までの4.53km区間だ。プラタナス1088株がトンネルをなすこの道は、人気ドラマ「砂時計」でチェ・ミンスがコ・ヒョンジョンをバイクの後ろに乗せて走る場面で有名だ。短いドライブに名残を感じさせるこの道は、四季ごとに変わる木の姿の変化まで全部見なければ、真の趣を味わうことはできない。
◆この街路樹が「父」を亡くした悲しみに沈んでいる。1952年、プラチナスの苗木1600本をここに植え、現在の成木に成長させたホン・ジェボン氏が17日、享年95歳で死去したからだ。ホン氏は、39歳に忠清北道清原郡江西面(チュンチョンブクト・チョンウォングン・カンソミョン)長に当選した後、木を植えて丁寧に面倒を見た。通りかかる人や子供たちが傷つけないように番人の役目まで果たした日も多くあった。「木は植えるだけで済むものではなく、子供のように丹念に面倒をみなければならない」という普段からの信念を実践してきたのだ。その後、道路の拡張など数度の危機もあったが、彼は徹底的に木を守りきった。
◆この並木道が最近、交通量増による道路拡張問題で危機に立たされている。市長が代わる度に、工事計画も変わるからだ。前任市長の際には、並木道を公園にして両方に道路を作るための地ならし工事が進んでいたが、現在は中断されている。ナム・サンウ現市長は、市民の世論調査をふまえ、並木道の脇に車道と歩道を新設する方針を打ち出したが、一部の市民団体の攻撃を受けた。並木道の雰囲気が損なわれるのではないか、不安である。
洪権喜(ホン・グァンヒ)論説委員 konihong@donga.com