「今日の取引価格は28ユーロ。一時、20ユーロまで急騰しましたが、先物オプションの満期日が到来したことを受けて、価格が安定を取り戻しました」。原油価格や株式市場のニュースではない。「地球温暖化の主犯」とされている二酸化炭素1トンを排出できる権利についた価格だ。
2002年、炭素市場が初めて生まれた欧州では、このようなニュースをよく耳にする。2005年、アムステルダムに開場した欧州気候取引所(European climate exchange・ECX)で排出権が取引された二酸化炭素は、昨年だけで4億5000万トン、金額では90億ユーロ(約11兆ウォン)を越える。
◆1997年の京都議定書を受けて、欧州連合(EU)や日本などの先進国は1次義削減期間の2008〜2012年の二酸化炭素の排出量を1990年の水準で5.2%の削減が義務付けられている。どの国が割り当て枠より温暖化ガスをたくさん削減すると、残りの分の排出権を第3国の企業に売ることができ、逆に削減目標が守れなかった場合、排出権を買うか罰金(ドイツは1トン当たり40ユーロ)が課される。このように排出権の取引制は、温暖化ガスの削減を促す市場制度だ。
◆義務削減の初年となる2008年が近づくにつれ、炭素排出権の価格が上がっている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2030年までに温暖化ガスの排出量の20%を減らすためには、排出権の価格が1トン当たり100ドルにならなければならないという分析を出している。気候変化に対応する経済体制の下では、炭素を排出できる権利がそのままお金になるわけだ。デュポンやシェルなどグローバル企業が温暖化ガスを減らし、代替エネルギー開発の投資を増やすのも、成長性の高い炭素市場を先取りするための戦略だ。
◆SKエネルギーは、蔚山(ウルサン)の城岩(ソンアム)埋立地の温暖化ガス削減の実績を国連に登録し、温暖化ガスの排出権を確保する計画だ。8月に市販された国内最初の炭素ファンドにSKエネルギー、ポスコ、韓国電力などが投資する動きを見せている。炭素ファンドは温暖化ガス削減事業に投資し、そこで確保した排出権を販売して収益を確保するファンドだ。世界は気候変動に対応する体制へ速やかに移動している。企業のやり方次第では、危機にもチャンスにもなる。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com