大統領府の名誉毀損告訴事件を捜査中の検察が、ジレンマに陥った。苦心の末、ハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)大統領選候補ら被告人4人に検察出頭を求めたが、ハンナラ党が事実上拒否したことで、苦しい状況に直面した。
▲ジレンマに陥った検察〓「李候補らに対する召喚通報をただ先送りにしては、『次期権力に早くもコネづくりか』と非難されるのではないか」
検察が李候補に召喚を通報した事実が伝えられた19日、ある検察関係者がこのように吐露した。召喚通報を遅らせれば、原告の大統領府はもとより、大統合民主新党側から集中砲火を浴びせられる「苦しい」立場を表現したのだ。
大統領府が先月7日に告訴状を出してからは、検察の選択の幅は広くなかった。告訴の主体が事実上、検察の人事権を行使する大統領府という点も負担になった。
実際、告訴状の受付から21日経った先月28日、原告の調査を終えた検察は、切迫した政治日程を考慮せざるをえなかった。公式選挙運動が始まる来月27日前に、いかなる形であれ捜査を終結させなければならないためだ。
法曹界周辺では、大統領府の異例の告訴が、状況を狂わせる1次的原因だという見方が多い。理論上は可能かもしれないが、政府を非難した野党に対して、最高権力機関の大統領府が告訴したこと自体が、前例がないということだ。
検察出身のある弁護士は、「検察を非難する問題ではなく、大統領府が前例もなく、野党の大統領選候補を告訴したことが誤りだ」と皮肉った。
選挙のたびに繰り返される候補間の名誉毀損告訴告発事件を外国のように処理できる制度的装置を設けるべきだという指摘もある。
米国など一部の国家では、選挙運動時に提起される候補側の名誉毀損争いに対して、3年程度をかけて捜査する。捜査機関の選挙介入論議を最小化しつつ、政治家どうし時間をかけて問題を自分たちで解決しろという意図だ。
▲捜査に難関多し…ハンナラ党も苦悩〓李候補らが最後まで召喚に応じなければ、検察としては、調査をせずに名誉毀損事件を終結することもできる。確保した録音記録や映像物の李候補らの発言内容で、刑事処罰をするかどうか決定するということだ。
しかし、野党の有力大統領選候補に対して、調査もせずに結論を下すことは容易ではない。これに先立ちソウル中央地検は、政治資金法違反の容疑で、民主労働党の権永吉(クォン・ヨンギル)候補に対して4度も出頭を要求したが応じなかったため、権候補を起訴するかどうかをひとまず留保した。
ハンナラ党も悩みがないわけではない。大統領選挙期間に大統領選候補が直接検察に召喚される先例を残すことになり、ひとまず拒否しているものの、召喚を拒否し続ければ、国家機関を無視すると映る恐れもあるためだ。
李候補の党内選挙陣営で法律支援団長を務めた呉世俓(オ・セギョン)弁護士は、「検察で『無差別』召喚を再び調整して正しく捜査するなら、調査に協力する」と述べた。
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