1997年の大統領選挙当時、金大中(キム・デジュン)国民会議候補は、全羅道(チョルラド)で92.3%を得票した。金鍾泌(キム・ジョンピル)自民連候補との連帯(DJP連帯)で、忠清(チュンチョン)圏でハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)候補よりも40万票の差をつけた。02年の大統領選挙時、金大統領の支援を受けた盧武鉉(ノ・ムヒョン)民主党候補は、全羅道で92.9%を得票し、忠清圏でハンナラ党の李候補よりも25万票リードした。忠清圏の優位は、盧大統領自ら「効果があった」と話した新行政首都公約のおかげだった。
政治指導者たちが平素は地域主義打破を叫んでいても、いざ選挙になると、これを利用して利益を得る現実を、去る2度の大統領選挙の結果が物語っている。今回の大統領選挙でも、実に憂慮される地域主義の亡霊がうごめいている。大統合民主新党や民主党など、いわゆる反ハンナラ陣営を中心に「西部ベルト」を作ろうとする動きがそれだ。
民主党の李仁済(イ・インジェ)候補は数日前、「忠清出身大統領」を掲げ、全羅道、忠清首都圏をつなぐ「西部ベルト団合論」を主張した。大統領選挙を政党のアイデンティティや政策とは関係なく、地域構図で行うという話だ。過去の大統領選挙では、批判世論を意識して表現に気をつける空気はあったが、今は露骨だ。歴代の大統領選挙の中で、このように露骨に地域主義をあおった前例はない。大統領選挙が切迫したにもかかわらず、依然として国民支持率が低いため、「DJPの思い出」にしがみついているのか。
新党で取り上げられている「全羅道+忠清連帯論」や民主党などとの候補一本化の構想も、結局は原則も名分もない「反ハンナラ党地域連合」を作ろうというものだ。全羅北道(チョルラプクト)出身の鄭東泳(チョン・ドンヨン)候補が、「金前大統領の代理人」である朴智元(パク・チウォン)氏を大統領選挙企画団顧問に委嘱しようとしたのも、それを通じて「全羅道代表性」を強化しようというジェスチャーと見える。金前大統領が、その中心にいることは否定しがたい。
地域主義は、国民の理性をマヒさせ、合理的な政治的選択を阻害し、社会的対立をもたらす退廃的な政治行動である。地域主義の弊害を取り除き国民統合の先頭に立つべき大統領選候補たちが、目前の得票に目がくらみ、再びその亡霊を呼び出して呪いの儀式をすることは、韓国政治文化がまだ後進性を克服できていない証拠である。覚醒した国民なら、これを容認してはならない。