10月29日、東部アフリカ海域で海賊と対峙していた北朝鮮の貨物船が、米駆逐艦の助けで危機から逃れた。今回の救助作戦が米朝関係改善の転機になるか、注目を集めている。
ただ、ジェフ・モレル米国防省報道官は、同日の定例ブリーフィングで、「その質問に答える準備ができていない」とし、政治的に解釈されることへの警戒を明らかにした。
▲拉致から救出まで〓米当局の説明や外電の報道を総合すると、インドを出航した北朝鮮の貨物船「テホンダン号」は29日午前、乗組員22人(推定)を乗せ、ソマリアのモガディシオに向かっていた。積載貨物は砂糖だったと報じられている。
同船舶は01年、韓国海軍の阻止態勢を破って済洲道(チェジュド)北方海峡を無断通過した北朝鮮の船舶4隻の一つである。当時の活躍などが評価され、船長に「努力英雄」の称号が与えられたことで有名な船舶だ。
「テホンダン号」がソマリアの首都モガディシオから東北60海里(111キロメートル)地点を航海していた時、海賊船が現れた。今春、韓国の乗組員4人が拉致された「マブノ1、2号」拉致事件も同じ海域で発生した。
海賊はわずか7人(推定)だったが、あっという間に「テホンダン号」の甲板を制圧した。数的に優位だった北朝鮮の乗組員たちは、操舵室とエンジン室に引きこもり、対峙した。
乗組員たちは、電話で緊急救助を要請した。ケニアの乗組員救助プログラム(SAP)東アフリカ支部に受理された通報は、マレーシア所在の国際海事局(IMB)に即時中継された。
五大洋における海賊関連事件を統制するセンターといえる国際海事局は、バーレーンに駐留していた米連合艦隊司令部に支援を要請した。艦隊司令部は、折しも拉致現場からわずか50海里(92キロメートル)離れていた駆逐艦ジェームス・ウィリアムズ号に対応命令を出した。
駆逐艦からヘリコプター1台が拉致現場に出動し、北朝鮮の船舶が海賊に制圧されていることを確認した。ウィリアムズ号はソマリア政府に「海賊鎮圧のため領海に入る」と知らせてから、同日午後12時を前後して現場に到着、無電で「即刻投降」を求めた。
突然の米駆逐艦の出現に海賊はあわてたようだ。その隙を狙って北朝鮮の乗組員は隠していた銃で銃撃をはじめ、海賊を一掃した。10年以上の兵役を終えた除隊軍人が大半を占める北朝鮮の乗組員には、一人当たり、AK−47自動小銃が支給されるという。
交戦の結果、海賊2人を射殺、5人を生け捕りにした。北朝鮮の乗組員3人も重傷を負った。
映画のワンシーンのような今回の事件は、北朝鮮の乗組員たちの肉体的・精神的な武装状態を物語っているといえる。28日、中国の沖合いで沈没した北朝鮮の貨物船の乗組員23人のうち20人は、海岸まで7キロメートル以上の距離を泳ぎきった。
▲北朝鮮乗組員が米駆逐艦の乗船〓交戦には立ち入る余地がなかった米海軍は、事後措置で主導的な役割を果たした。北朝鮮の乗組員たちは、船を取り戻した後、無電で医療支援を要請した。ウィリアムズ号の水兵3人は「テホンダン号」に乗船し、負傷者の応急手当をした。重傷を負った3人は駆逐艦に運ばれ、治療を受けた。
これまで、北朝鮮の船舶を対象に大量破壊兵器の第3国輸出や偽札・麻薬などで米国が監視態勢を続けていたことを考えると異様な光景であった。
ただ、第5艦隊のロバートソン報道官は、「救助要請があれば、私たちは支援に乗り出す」と簡単な論評だけを発表したと、AP通信は報じた。
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