「大統領が選挙に影響を与えかねない行為を禁じるのは、大統領の『去勢』に他ならない」(盧武鉉大統領側)
「選挙への『不当な』影響力行使を禁ずる選挙法の条項が、行き過ぎとは思わない」(中央選挙管理委員会側)
盧大統領が中央選挙管理委員会(選管委)による選挙での中立義務の順守要請に反発して提起した、憲法訴願に対する初の公開弁論が1日、憲法裁判所で行われた。
同日の弁論では、盧大統領側と選管委側の訴訟代理人及び参考人が出席し、主な争点をめぐって、激しい法理攻防を展開した。
選管委は6月2日、盧大統領が「現政権への評価フォーラム」、同月8日、円光(ウォンガン)大学での特別講演、13日のハンギョレ新聞とのインタビューなどで2回にわたって、選挙法9条1項に違反したという判断を下し、選挙での中立義務の順守を促した。これに対し、盧大統領は「自然人盧武鉉」の名義で同月21日、憲法訴願を提起した。
憲法裁判所は憲法裁判所法に基づき、事件受理180日以内に判断を下さなければならないが、強制規定ではないために、憲法裁判所がいつ判断を下すかは未知数である。
▲大統領に選挙での中立義務はあるか〓選挙法9条1項は、「公務員等政治的中立を守らなければならない者は、選挙への不当な影響力の行使等、選挙の結果に影響を与える行為をしてはならない」と定めている。
盧大統領はこの選挙法の条項の対象が明確でないため、違憲の余地があるということを指摘している。
盧大統領の参考人である慶熙(キョンヒ)大学法学科の丁泰鎬(チョン・テホ)教授は、「選挙の結果に影響を与える行為の範囲は無限大に拡大解釈できるのに、禁じる行為の範囲を定めていない。選挙の結果に影響を与えない大統領の行為というものがあるだろうか」と指摘した。
また、「大統領本人さえも選挙結果に影響を与える一切の行為ができないのであれば、大統領の去勢にほかならない。これは大統領中心制の憲法に反するもの」と主張した。
これに対し、選管委側の参考人である慶熙大学法学科の盧東一(ノ・ドンイル)教授は、「政治活動のうち、選挙に不当な影響を与えかねない行為だけを慎んでほしいと要請したのは選挙法に基づくもので、大統領も例外になるわけにはいかない。大統領が政治的表現の自由を享受する余地が十分にある」と反ばくした。
▲憲法訴願の提起資格はあるか〓大統領に憲法訴願を提起する資格があるかどうかをめぐっても、双方の意見は真っ二つに分かれた。
選管委側の訴訟代理人である黄道洙(ファン・ドス)弁護士は、「選管委が送った文書の受取人、国家機関である大統領だ。国家機関に一定の行為が憲法に違反したことを知らせ、法令の順守を求めたことに対し、憲法訴願を提起することはできない。また、このことが盧大統領の基本権を深刻に侵害したわけでもない」と指摘した。
一方、大統領側の訴訟代理人である高栄九(コ・ヨング)弁護士は、「大統領は国家機関、政治家、公務員、国民の地位を併せ持っている。選管委の警告に反しかねないという心理的制約がある状態で発言するのは、政治家としての大統領の名誉と活動において、実質的かつ厳酷なハードルとなる」と述べた。
▲選挙法に反しているか〓大統領の発言が選挙法に反するものかどうかをめぐっても、論争が行われた。
黄弁護士は、「盧大統領は、特定の候補の政策について『減税政策に騙されてはならない』とけなし、『独裁者の娘』、『無責任な政党』といった表現を使った。時期や場所、頻度からして選挙法違反が認められる」と説明した。
一方、高弁護士は、「ハンギョレ新聞とのインタビューは、盧大統領が政治家の立場で臨んだものである。また、現政権への評価フォーラムと円光大学での講演は、国民の一人として行ったものなので、選挙法の適用対象ではない」と主張した。
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