ソウル大学発展研究所と東亜(トンア)日報が97年の通貨危機後の国民意識に関して調査したところ、この10年間で資産が増えたという回答は15%に過ぎないのに対して、減ったという回答は36%にもなった。自らを中産層だと考える国民も10年前の41%から28%に減少した。
これとは別途に保健社会研究院は、2000年に56%だった中問層が2006年には44%に減ったという報告書を最近発表した。同じ6年間下位層の割合は、34%から45%に増えた。特に、貧困層は11%から20%へとほぼ倍増した。
両調査の概念と基準がやや違うが、一部の中産層は庶民に、一部の庶民は貧民に下方移動したことが分かる。「国民の70%を中産層に作りあげる」と述べていた盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の大統領選挙公約は、恥ずかしいものとなった。
ソウル大学と本紙の調査では職業選択の際に「安全性」を最優先に考慮するという回答者が56%にもなった。国民の44%は、最大の危険及び不安要素に就職難及び失業を挙げた。不安が深まるにつれ成功の第1条件としてお金を挙げる人が、10年前の36%から61%に増えた。
中産層は国の支えであると同時に社会葛藤を和らげる安全弁だ。中産層が減って中産層の意識が弱体化することは、韓国社会が貧富葛藤にさらされたという警告だ。
中産層を育てるためには当然、良い働き口を増やさなければならない。国内投資を誘導し積極的な成長政策を打ち出してこそ雇用が生まれる。市場原理に逆って成長動力を弱体化させ、お金持ちを攻撃するポピュリズムは中産層の縮小を促すだけだ。
大統領選の候補たちは、まずは中産層の復元のための代案を明確にしなければならない。漠然たる掛け声ではなく、実践可能性を検証することができるアクションプランが必要だ。左派勢力は両極化問題を解決することができる唯一の勢力だと主張しながら、これを再政権の名分にしている。しかし、お金持ちを政治的に攻撃すればするほどお金と人の海外エクソダスのみを加速させ、国富の増大も、中産層の拡大も困難になる。お金持ちから奪い庶民に配るという掛け声で成功した国は存在しない。