1997年末、韓国経済を直撃した通貨危機を乗り越えるため、政府は、金融・企業・労働・公共の4大部門を対象に、改革案を打ち出した。
企業は身を削るような構造調整に励み、国民は痛みを分かち合った結果、韓国は01年8月、世界通貨基金(IMF)管理体制から脱却することができた。
しかし、第一(チェイル)銀行売却など、多くの試行錯誤を経験した。こうした試行錯誤は、通貨危機の後遺症として、今も経済の重荷になっている。
●BIS規制が構造調整の基準に
通貨危機直後、金融市場が累積した不良債権や信用収集で機能しなくなると、金大中(キム・デジュン)政権は、強力な構造調整を開始した。名分は「効率的な金融システムの構築」だった。
構造調整の結果、韓国の金融会社は1997年末の2103社から今年6月現在の1304社に減少した。10年間で金融会社の3分の1が消えたわけだ。
銀行業界の構造調整は、他の金融部門に比べ、はるかに厳しいものだった。国際決済銀行(BIS)規制により、自己資本率が8%に達しない銀行は市場から撤退させられたり、買収合併の対象になってしまった。
これを受け、一般銀行の自己資本率は1997年には7.04%だったのが昨年には12.31%に大幅改善した。不良債権比率も6.70%から0.84%へと大幅低下するなど、健全性も向上した。
ただ、流動性危機が深刻だった時期にBIS規制の適用が厳しすぎたとして、いまだ議論になっている。
ある民間経済研究所の研究員は、「銀行の成長可能性や流動比率など、多様な判断基準があるはずなのに、BISの自己資本率が構造調整の唯一無二の基準になったのは、今も残念で疑問に思うこと」と話す。
グローバルスタンダードブームに踊らされ、韓国銀行産業の主導権を外資系に手渡したのも試行錯誤の代表例と言える。
第一銀行のほか、カーライルファンドに買収された韓米銀行(後にシティグループに吸収される)、ローンスターファンドに買収された外換(ウェファン)銀行などの例は「国富の流出」論争まで引き起した。
●改善したコーポレートガバナンス、失われた躍動性
大企業の野放図な「借金経営」と「乱脈経営」は、通貨危機を招いた主因とされる。政府はそのため、1998年初頭、大手企業に「護送船団式」経営の終息を注文した。大手企業同士で、同様または業種の重なる事業を交換する形で統廃合する「ビッグディール」が行われたのもこのためだ。
翌年には、△産業資本と金融資本の分離、△循環出資及び不当な系列内取引の抑制、△変則贈与の遮断など、コーポレートガバナンスの改善を要求した。
各企業は、不良資産や事業を大胆に整理し、選択と集中を通じて目玉事業を育成するなどの自助努力で収益性と健全性の面で相当の成果を挙げた。
また、循環出資に比べ、企業統治が比較的単純な持ち株会社に転換した企業が、今年8月末現在40社に達するなど、コーポレートガバナンスもかなり改善したと評価されている。
しかし、その過程で「一進一退」的な政策の混乱も少なくなかった。
1999末、コーポレートガバナンスの改善を理由に、出資総額制限制度を廃止したが、01年4月「経済力の集中を抑制する必要がある」として復活させたのがその代表例だ。政府は、企業統治の改善を理由に同制度を維持しているが、企業の事業多角化や投資のハードルになっていると指摘されている。
金大中政権が通貨危機を克服する策として「外国資本の呼び込み」を過度に強調してから、現政権にいたるまで、韓国企業への逆差別を指摘する声も根強い。
サムスン経済研究所によると、05年末現在、売上高1兆ウォン以上の外資系企業20社のうち13社(65%)は、元々は韓国資本だったが通貨危機後、外国資本に買収された企業だ。
●終わらない構造調整
政府が1997年11月から今年9月までに投入した公的資金は168兆4000億ウォンにのぼる。しかし、これまで回収された資金は89兆1000億ウォン(52.9%)にとどまっており、通貨危機の傷あとは依然として深く、広い。
特に、当初政府がかかげた4大部門の改革のうち、金融と企業を除いた労働及び公共部門はこれといった実績がなく、「改革なき退歩」とまで指摘されている。
韓国経済研究院の許賛国(ホ・チャングク)経済研究本部長は、「公共と労働部門の改革は、実質的な進展が見られない上、一部では過去回帰的な様相まで呈している。通貨危機を完全に克服するためには、両部門での改革を急がなければならない」と強調する。
三星(サムスン)経済研究所のファン・インソン首席研究員も、14日発表した報告書「通貨危機10年の評価と課題」で、「労働部門の柔軟性は通貨危機以前に比べ大きく改善しておらず、雇用創出の低迷など、労働市場の活力も低下した。合理的な労使関係を築き上げると同時に労働部門の柔軟性強化が欠かせない」と述べている。
cha@donga.com