「一文なしで、病気がちで、独りぼっち」。だから、この世の中で自分が一番かわいそうな人だと思っていた女が、自分よりさらに不憫な少年と出会う。
母親が死んだ後、相次いで女を変える父親の下で育った少年にとって、この女は11番目の母親となる。互いに相手の方がより可愛そうだと主張していた二人が、心を開き、相互に大切な存在となる過程を描いた映画、「11番目のママ」(29日公開)。「ママ」役は、あの女優の金ヘスだ。
「タチャ(賭博師)」の撮影中、自分には入ってもいないシナリオを偶然、目にした。当時、金ジンソン監督は5億ウォン未満の超低予算の映画を構想していたものの、具体的な製作計画すらなかった状態だった。金ヘスのほうが先に、「私でどうか」と丁寧に声をかけた。「製作は容易ではなさそうだ」と思いながら。しかし、意外なことに彼女ががキャスティングされるや、リュ・スンニョン、ファン・ジョンミンが参加し、子供役にはドラマ「パリの恋人」で、金ジョンウンの従兄弟役で名をはせた金ヨンチャンがキャスティングされた。投資も、予想のほか、多めに集めることができた。依然として18億ウォンの低予算映画。しかし、希望的な、そしていつもとはやや違うスタートだった。
「ハリウッドの役者たちは大作にばかり出演するわけではありません。我々の目にそのような作品ばかりが映るだけです。二コル・キッドマンやケビン・スペーシーのような大スターも、インディ映画に出ています。本当にやりたい作品があれば…。もちろん、金額は少ないと思いますが、かといって非常に少ない金額でもないし、また、いい経験は金にはかえられません。それに、私は大変いい作品にあこがれていたし」
もう、きれいに映りたいという気はなくなった。役者としてのジャンルを広めるためには、そのような時期が必要なことはわかっていたし、そのようなチャンスもいただいた。「いいじゃないか」では、髪を掻きながらあくびをする無職のオールドミスを演じ、今度は、黄ばんだ顔に病気がちで、生活保護対象者の子供の食券まで奪っては食べ物を買い、ともすると悪口を放つきつい女だ。
「私は化粧をすれば華やかになるが、全部、落として自宅にいれば、そうでもないんですよ。外に出て声を出さなければ、誰も自分だとは気づきません。仕事は長年やっているので、声を聞けば、すぐ分かりますが」
彼女はあの大きな瞳をさらに大きく開きながら、改まった口調で、この言葉は本当だと、再び強調した。
彼女がこれまで演じてきた役柄のなかで、もっとも下流層の人生だ。皆から見捨てられ、自分の人生をないがしろにしている女。自分が「幼い頃から、どれだけ多くの人たちの関心や愛情を受けながら育ってきたか」をよく知っている金ヘスは、「我々には皆、大変な時期があるが、どれだけ利己的で、自分がつらいということだけ認めてもらいたいと思いながら生きていくのか」を再び感じたという。実際に、このような人がいると知っていながらも。
母親の役割は初めてではないが、今回は少し変わっている。金ヘスは、誰かの母親になって感じる母性愛というより、疎外され、欠乏している二人が、どのようなやり方で近づくかを念頭に置きながら演じた。「いつも見捨てられ、挫折ばかり味わってきた人たちは、誰かから愛情を示されれば、より攻撃的に変わりますね。切に愛されたいと思うものの、そのような経験がないので、どう反応すればいいか分からないからです。再び受ける傷跡への本能的な恐怖もあるし」。それで、映画の中の二人は、相手が関心を示せば、最初は冷たくそれを拒否する。
今の若い女優たちがよちよち歩きをしていた頃から演技をしてきた、22年目の37歳の女優は、スクリーンで彼女が見せる強力な「フォース」とは違って、安らかに見えた。彼女はインタビューの間中、「自分は長く続けたせいで、そうなのか分かりませんが」という言葉を繰り返した。彼女はそれほど長い間、観客の傍にいた。そして、「自分を押さえつけた」という20代を過ぎ、30代後半へと向かう今、すこぶる気楽に見える。2年間5本の映画を撮るほど、多忙ななかでも彼女は余裕があった。
「私はですね。数年前までは本当に自信がなかったんですよ。ですが、何でも本当にやりたいことがあれば…。ただ、やればいいんですね」
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