昔、中国に矛と盾を売る商人がいた。周囲に集まった見物人に盾を見せて、「さあ、みなさん、この盾は何で突いても突き通せない」と声を高めた。今度は矛を取り出して、「この矛で突き抜けないものはない」と自慢した。見物人が商人に聞いた。「ならば、その矛でその盾を突いたらどうなるのか」。商人は言葉をなくした。約2000年前の『韓非子』にある故事だ。
◆物事のつじつまが合わない場合に使う「矛盾」という言葉は、まさにこの故事から生まれた。18日、李会昌(イ・フェチャン)元ハンナラ党総裁の光州(クァンジュ)での発言が、この商人の言葉に似ているという感じを受ける。李元総裁は、「希望韓国運動本部」の招請講演で、金大中(キム・デジュン)前大統領の太陽政策が、北朝鮮の改革開放の効果どころか、むしろ核保有国になるのに寄与したことを強く批判した。その一方で、「韓半島に直接対話の扉を開いた業績を残した」として、金前大統領を高く評価した。
◆金前大統領に対するこのような相反する評価は、矛と盾を売る商人のように有権者を面食らわせる。「対話の扉を開いた業績」を認めるなら、太陽政策も肯定評価してこそ論理的に整合する。李元総裁もこれが分からないはずはないが、なぜこのように言ったのか。正統保守の安保思想を大統領選再出馬の名分に掲げた彼としては、太陽政策を批判することで保守層の心もつかみ、同時に金前大統領を評価することで、全羅道(チョルラド)の有権者たちによく見られたかったのだろう。
◆しかし、太陽政策を一貫して否定してきた李元総裁なら、金前大統領に対してもこのように言わなければならない。「この10年間、太陽政策だけに固執せず、時には圧迫もし、ムチも持っていたなら、北朝鮮の行動は変わったはずだ。北朝鮮は、核を開発する金も時間も持てなかっただろう。韓国は、10年という時間を浪費した。いかなる言い訳をしても、太陽を売って金前大統領はノーベル平和賞を受賞したが、5000万の国民は核を頭に載せて暮らすことになった」。所信ある指導者は、状況によって言葉を変えないものだ。
陸貞洙(ユク・チョンス)論説委員 sooya@donga.com