忠清南道泰安郡所遠面千里浦イヒャン里千里浦(チュンチュンナムド・テアングン・ソウォンミョン・イヒャンリ・チョルリポ)海水浴場近くに住む、チ・ジョンサン(64)、金チュンジャ(60・女)氏夫婦は、7日朝早く朝食をとり、カタクチイワシ漁に出る準備をした。
8月半ばから始まるカタクチイワシ漁は12月がシーズンが終わる時期である上、今年の漁獲量が芳しくないため、チ氏夫婦は心身ともに余裕がなかった。
軽い昼食と網を用意していたら、突然気分の悪い臭いが鼻をついた。金氏は不安な思いをしてボイラー室に向かった。別に異常はなかった。「もしかしたら、船からオイルが漏れるのではないのだろうか。」チ氏はハットなってカタクチイワシ漁船に駆けつけた。ところが取り越し苦労だった。夫婦は臭いの原因に見当がつかず、首をかしげながら船に乗った。
ところが、24時間もしないうちに想像さえできなかった災いがこの夫婦を襲った。8日午前、チ氏は60年間の半生をともにした海の前で、初めて恐ろしい気持ちに駆られた。息が切れる直前の最後のもがきのように、真っ黒に覆われた海はオイルの塊を一気に吐き出している。
住民たちは、水くみ一つを手に黒い海と立ち向かっている。数百、数千度も水くみでオイルを汲み取ったが、死の陰は海岸を越えて海辺の砂原にまで覆っている。時間が経てば経つほど、災いは絶望と化していくのだった。
都会に出ていた子供たちは、「お父さん、お母さんまで汚染されるのでは」と、故郷を離れるように促した。
「数百万ウォンをかけて網まで買い換えたのに、ここを去るわけには行かない」
黒い海と死闘を繰り広げている住民たちに心配する暇などなかった。数日後、一筋の希望の光がかすかに見えてきた。ボランティアたちだった。
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