朝鮮時代の王たちは、日照りなどの自然災害を防ぐため、特別赦免を実施したりもした。監獄に入れられた可哀想な民を釈放すれば、天が応えてくれるという信念のためだった。しかし、世宗(セジョン)大王は即位22年(西暦1440年)、その弊害をこのように指摘する。「毎度、恩赦を施したが、一度も天の応えを得られなかった。災害を無くす上で役に立たないようだ。むしろ、罪人らが法の網をくぐり抜けるために日照りばかり待つ弊害が生じた」。
◆近頃の特別赦免(特赦)の名分は、大体「社会統合」と「国民和合」だ。しかし、歴代政権が数多くの特赦に踏み切ったものの、統合には役立っていないようだ。力のある政治家や財界関係者だけを対象にした「彼らだけの祭り」に終わっているためだろう。年の瀬に決行された盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の特赦も同様だ。今回は最初から大統領府が金宇中(キム・ウジュン)氏をはじめ75名の対象者の選定を主導したという。司法部が口をはさむ余地がなかったというから、司法部の権威の損傷に対する考慮もなかったわけだ。
◆財界関係者に対する赦免・復権は、少なくとも「経済立て直し」の名分でもある。10年以上服役した模範死刑囚6名の無期懲役への減刑も、「事実上の死刑廃止国」と宣言されたところなので、理解できる。しかし、不法傍受黙認の疑いで起訴された林東源(イム・ドンウォン)・辛建(シン・ゴン)元国家情報院長、朴智元(パク・チウォン)元大統領秘書室長、崔道述(チェ・ドスル)元大統領総務秘書官らに対する赦免・復権は、「金大中政府との和解」「側近への配慮」以外に説明の道がない。2002年の大統領選挙の時、李会昌(イ・フェチャン)元ハンナラ党総裁の息子のチョンヨン氏の兵役不正疑惑を提起した、いわゆる「兵風」事件の主役の金大業(キム・デオプ)氏まで対象に入れようとしたというから、盧大統領が遅ればせながら「当選謝礼」をするのかと聞きたいぐらいだ。
◆林東源(イム・ドンウォン)・辛建(シン・ゴン)元国家情報院長は、わずか数日前、控訴審の裁判が終わって、最高裁に上告した状態だった。大統領府は彼らが特赦の対象になれるよう、「上告の取り下げ」と「控訴審刑量の確定」要件を満たすようにと、水面下で言質を与えた疑惑が高い。ある法哲学者は、「赦免とは、法外の世界から差してきて、法の世界の寒い暗黒を見ることができるようにする明るい光線」と喩えた。ここで言う「明るい光線」は、権力者の個人的・政治的な思惑まで含むわけではない。
陸貞洙(ユク・チョンス)論説委員 sooya@donga.com