日本のマンガ『ギャラリーフェイク(fake)』はタイトル通り、「贋作(fake)」の絵を販売しながら金持ちの財布をゆるめる話術に長けた画廊の社長が主人公だ。「魂」に訴えるという美術品の裏に隠された詐欺と陰謀が赤裸々に描かれる。昨年、韓国で浮上した数件の「ギャラリー事故」を思い出すと、マンガは単なるフィクションともいえなさそうだ。大型ギャラリー、カナアートセンターの会長が株主として参加するオークション会社、ソウルオークションが取引した李仲燮(イ・ジュンソプ)の絵が贋作であることが判明した。三星(サムスン)家が画廊界の大物・ソミと、国際ギャラリーを通じて企業の秘密資金で高価な美術品を購入したという疑惑も提起された。
◆ギャラリーが違法と詐欺の空間になる危険性が高い理由のひとつに、「美術作品の特殊性」が挙げられる。定価というものがなく、それも画廊ごとに異なる。社長が目をつぶりさえすれば、会計操作もさして難しくない。巨額の売買利益を受け取っても譲渡税を一銭も納めず、土地や建物のように登記対象でもないため、相続、贈与、賄賂手段にもってこいだ。国内の各ギャラリーの秘密主義は世界的に有名だ。オーナーだけが知る取引もいくらもあり、必要なら所蔵者や購買者の秘密を徹底的に守ってくれる。
◆李明博(イ・ミョンバク)大統領当選者の2人の側近の夫人が最近、同じビルの上下の階に画廊の支店を出しており、話題だ。鄭斗彦(チョン・ドュオン)議員の夫人の名をつけた「イ・ファイクギャラリー」は01年、仁寺洞(インサドン)の小さな賃貸画廊から始め、05年にソウル鍾路区北村(チョンログ・プクチョン)に画廊を出すなどして成長し、今回、ソウル江南区潭洞(カンナムグ・チョンダムドン)に支店をオープンした。朴亨逷(パク・ヒョンジュン)議員夫人のチョ・ヒョン氏は18年間、釜山(ブサン)で「チョ・ヒョン画廊」を経営し、今回、ソウル支店を出した。
◆美術界のある関係者は「画廊の営業は金さえあればできるというものではなく、ロイヤルティ顧客が必須」とし、「2つの画廊の歩みはそれほど顧客ネットワークがよくなったことを端的に示すもの」と説明する。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時には、民衆美術作品を主に取引してきたある画廊が急成長し、注目されたことがある。イ・ファイク氏は「夫の知名度で話題になるのはしかたないでしょう」と話したという。政治と絵画が「夫唱婦随」ではないかという視線は、重荷かもしれない。
許文明(ホ・ムンミョン)論説委員 angelhuh@donga.com